ロイヤルデリ事業の運営責任者である庵原氏は、大学卒業後はサントリーに入社し、酒類ビジネスの営業に従事。個人飲食店への“どぶ板営業”から営業企画まで経験した後、日本サブウェイに出向し、取締役マーケティング本部長や同営業統括も務めた。ベンチャー事業や製パン業での経験も持つ。「もともと祖母が東京・銀座で経営していた料理旅館で、幼少時からお手伝いをしたことが『飲食の提供』への原体験だった」と明かす。

ロイヤルHDはOBを大切にする一方、“外様”でも活躍できる土壌がある。庵原氏に求められるのは、「外の風を送り込みつつ、内部の成長を再発火させる」役割だ。

「これから『自宅のぬくもり』が恋しい時期を迎えます。ロイヤルデリでは冬の限定スープセットもご用意しました。この時期に食べたい料理を味わいながら、レストラン仕様の簡単でおいしい料理を『ラクして楽しんでいただきたい』と思います」(庵原氏)

料理の味は“機能的価値”だが、簡単につくれるという気分は“情緒的価値”だ。

目指すは「ウーバー」と並ぶ中食の代名詞

筆者は食品を「生活文化」の視点でも考察する。2011年には福岡県の「冷凍食品専門の大型スーパー」を視察・取材した。当時すでに「おいしい冷凍食品」を掲げていたのだ。9年後、同じ福岡県(福岡市)発祥のロイヤルHDが新たな訴求を始めたのに“縁”を感じた。

「ビーフシチュー」の調理例
撮影=プレジデントオンライン編集部
「ビーフシチュー」の調理例

コロナ禍は企業や個人にとって大きな災難だが、一方で新たな生活文化も芽生えてきた。今回でいえば「冷凍食品のさらなる進化」だ。すでに食品メーカーの努力により、炒飯や餃子やタコ焼きなどの冷食は、かなりおいしくなった。外食業界の中には、「大阪王将」を展開するイートアンドのように、冷食事業がレストランに取って代わり、事業の柱になっている企業もある。ロイヤルHDはどうか。

「ロイヤルデリの事業はまだまだ小さく、レストランのような主力事業になるとは考えておりません。ですが、コロナをきっかけに成長していることから、いずれは中食の代名詞として選ばれるようになりたいです。『今日はウーバー(イーツ)か、ロイヤルデリにする?』というように、お客様の選択肢に当たり前のように入ることを目指しています」(庵原氏)

庵原氏は「歴史に名を残す仕事をしたい」もモットーだ。今年は日本で「冷凍食品100年」の節目とも聞く。1920年にニチレイの前身が始め、多くの先人がバトンをつないできた。

飲食に厳しい目を持つ日本の消費者と向き合いながら、「歴史に名を残す」が実現できるか。泉下の江頭氏も厳しく温かい目を向けているはずだ。

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