コンビニ本社のバイヤーが、監修を依頼する店を決定
このところコンビニで、有名ラーメン店が監修した「チルド麺」の展開が活発だ。チルド麺とは、器入りの冷蔵状態で販売され、そのまま具やスープを合わせる、あるいはレンジで温めて食べる麺のこと。
現在、セブン-イレブンでは「札幌すみれ」「中華蕎麦とみ田」「一風堂」など、そしてローソンでは「坂内食堂」「博多一幸舎」「麺屋彩未」が監修したチルド麺を販売している。それぞれのチェーンの本社広報によれば、セブン-イレブンは2007~2008年ごろから、ローソンは2006年ごろからこうした企画商品を全国規模で販売し始めたという。
ではコンビニと有名ラーメン店とのコラボレーションは、どのような経緯で実現し、商品化に至るのだろうか。「ラーメンデータバンク」の創業者で現会長の大崎裕史氏が解説する。
「まずコンビニ本社のバイヤーが、監修を依頼する店を決定します。店選びに当たっては本社側が独自にピックアップする場合と、業界に精通したラーメン評論家などからアドバイスを仰ぐ場合がありますね」
限られた原価のなかで「再現できる味か」が重要
白羽の矢が立つのは、高い評価を得ていてネームバリューがあることはもちろん、さらにいくつかの条件をクリアした店だ。
「瞬間的な人気ではなく、安定してにぎわっている店であることは大事です。コラボ商品がコンビニに並んだ頃、監修した店がなくなっているようでは話になりませんから。そして提供しているラーメンが、すでにコンビニ側にラインアップされている商品との違いがわかりやすい、特徴的な味であるかどうか。さらにはチルド麺として商品化した際、オリジナルに近く再現できる味なのかどうかも重要です」(大崎氏)
いざ店が決まると、バイヤーが対象店の主人と何度も話し合いを行う。
「インスタントカップ麺でのコラボの場合もそうですが、チルド麺も最初からおおよその販売価格が決まっているので、材料にかけられる原価には限界があります。だから『商品化された際、お店の味そのものというわけにはいきませんがよろしいですか』と最初の段階で店主に伝え、承諾してもらった上で面談を進めます」(大崎氏)
ただ中には、それをよしとしない店主もいる。
「こだわりが強い主人だと、いつまでたっても完成品にOKが出なかったりします。そうなると開発経費がかさむし、販売スケジュールも狂ってしまう。バイヤーは経験が豊富ですから、店主へのオファーの初期段階で一緒に組める相手かどうかを見極めます。ですからお互いに折り合えず、結局物別れに終わるケースもあるそうです」(大崎氏)