アンチが増えるほどトランプは力を発揮する

内部告発者も後を絶たない。

2019年にはトランプがウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した際に、軍事援助の見返りに翌年の大統領選有力候補と目されていたバイデンとその息子に関する調査を依頼したという「ウクライナ疑惑」が大きな話題を呼んだ。下院の弾劾裁判まで通過したこの疑惑では、複数の内部告発者がメディアにリークしていた。民主党が支配する下院では弾劾決議は可決されたが、共和党が支配する上院では可決できずに終わってしまった。

ほかにも、共和党支持者が反トランプを訴える運動がある。「リンカーン・プロジェクト」や「Defending Democracy Together(ともに民主主義を守ろう)」などが代表例だ。「リンカーン・プロジェクト」は、共和党の大物のスタッフがつくりあげた運動だ。父ブッシュ、子ブッシュ、ジョン・マケイン上院議員、アーノルド・シュワルツネッガーらが名を連ね、なかでも2018年に亡くなったマケインと、その妻と娘は反トランプの急先鋒として知られた。

横江公美『隠れトランプのアメリカ コロナ感染から奇跡のカムバックでトランプが勝つ⁉』(扶桑社)
横江公美『隠れトランプのアメリカ コロナ感染から奇跡のカムバックでトランプが勝つ⁉』(扶桑社)

ブッシュ親子の政権で国家安全保障に携わった元高官たちは「バイデンを支持する」との宣言を出した。そこには、知日派として知られるリチャード・アーミテージ元国務副長官やマイケル・グリーン戦略国際問題研究所(CSIS)副理事長の名前もある。チャック・ヘーゲル元国防長官や元大使の肩書きを持つ人物も名を連ねる。

取りまとめをしているのは、子ブッシュ時代のイラク戦争の理論武装を行ったビル・クリステルだ。クリステルが運営する「Defending Democracy Together」のサイトで、その主張を知ることができる。

共和党の元大統領、元候補者という中枢中の中枢がトランプに反対の声をあげている。彼らにとっては、今まで築き上げてきたアメリカを、トランプに破壊されているように思えるのだ。

だが、アンチが増えるほどトランプは力を発揮する。残念なことに今のアメリカでは、共和党内のトランプ支持は90%前後だ。共和党にも隠れトランプはいるのである。

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