会えば人を虜にするカリスマ性

当時、トランプは「You're fired!(お前はクビだ!)」の決めゼリフで有名なテレビ番組を持っており、私は有名なビジネスマンであり司会者でもある人物と会えたことが純粋に嬉しかった。50代のトランプは体が大きく、その身のこなしにはエネルギーが満ち溢れていた。トランプが動くとお客さんたちはみんな彼を目で追っていた。

48年間、バイデンが上院議員をしている間、トランプは航空会社を買収しては倒産させ、カジノをつくっても倒産させ、大学を設立して訴えられ、トランプタワーを建てまくった。自分がプレーしたいゴルフ場を造り、泊まりたいホテルとレストランを造る。そしてテレビで「お前はクビだ!」と叫んで人気を博していた。

結婚を3回しているが、2人は外国人でモデル、1人はアメリカ人の司会と女優をこなすタレントだ。子供は5人。孫にも恵まれた。3回目の大統領選挙で当選を果たしたが、以前は民主党支持者だったこともある。やりたい放題であるが、失敗と成功から成功のコツを学んでいる。

会えば人を虜にする。そのカリスマ性は今回の大統領選挙を見る限り、まったく色あせていない。

レッドカーペットの魅力
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
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いくら叩かれても支持率を下げない

トランプの暴露本は売れに売れるが、選挙にあまり影響を与えないと言われ続けている。トランプ支持を隠そうとしない「トランピアン」の支持は底堅い。むしろ、暴露本はトランプの注目度を高めて隠れトランプを増やす。

トランプ政権で大統領補佐官を務めたボルトンの回顧録は彼の体験からなる。姪のメアリー・トランプが書いた『世界で最も危険な男』はトランプの姉マリアンとの会話に基づく。その会話のテープもある。

アメリカ政治に影響を与えてきたジャーナリストのボブ・ウッドワードは緻密な取材から2018年に『炎と怒り』を出版し、最近ではトランプへのインタビューをもとに『Rage(怒り)』を出版した。いずれもファーストハンド(一次情報者)か、それに相当するほどの情報源をもとに書かれた本である。

メアリーの著書では、姉マリアンが「トランプのペンシルベニア大学への編入は替え玉受験」と語っていたという。ウッドワードの最新作では、「トランプは初期のころからコロナは危険なウイルスであることを知っていた」と記されている。いずれも叩かれてはいるが、トランプの支持率を下げる決定打にはなっていない。いわゆる、「トランプの人間性とはそういうものだ」と思っている人が多いという証しだろう。