ニーズに対応できるトヨタの「一個流し」

鉄鋼業界に限らず、日本のメーカーはサプライチェーンが素晴らしく、多頻度小ロット生産ができるという特徴がある。

例えばトヨタ自動車の「一個流し」。クラウンが流れてきた後にカローラが流れてきて、その後にレクサスが流れてくるような、ニーズに合わせて柔軟に対応できる生産体制はその典型的なものであろう。

この特徴はウォルマートとイトーヨーカ堂を比較するとわかりやすい。利益率ではウォルマートが高いが、商品回転率は逆にイトーヨーカ堂が圧倒する。

この違いはウォルマートが大量仕入れで高いマージンを確保しているのに対し、イトーヨーカ堂は多頻度小ロットで売れた分だけ在庫しているからである。同じスーパーマーケットでも、全然違うビジネスなのだ。

こうして考えると、少なくともクリステンセンの主張を社会法則とするのは間違いであり、高コスト構造でも対応の仕方があることがわかるだろう。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=宮内 健)