企業の底力はトップの経営力鍛錬にかかっている

前経営陣の不祥事を受けてのトップ交代だっただけに、社内のコンプライアンス体制をいかに確立するかも、伊藤氏にとっては優先的なテーマだった。

セッション3でコーポレート・ガバナンスとコンプライアンス、リスク・マネジメントを担当した専任コーチは鵜飼暢雄氏。カゴメなどで監査役を歴任し、社団法人日本監査役協会の理事や幹事を長年務めてきた鵜飼氏はこう語る。

「これからはコンプライアンス体制なくして会社は存続できません。それを繰り返し申し上げました。コンプライアンスというレールの上にコーポレート・ガバナンスという機関車を走らせるのが社長の役目だ、と。部下は社長の行動を見ている。コンプライアンスを疎かにしていたら、何をいっても部下は社長を絶対に信用しないし、コーポレート・ガバナンスは成り立たない。社長の行動規範、企業の行動規範とは何かを、一緒に考えました」

ECプログラム終了後も、鵜飼氏に社内にコンプライアンス委員会を設立する仕事を個人的に依頼するなど、伊藤氏と専任コーチの関係は続いた。伊藤氏がECを受けた05年、06年と会社は2期連続で予算を達成し、売り上げは社長就任時の1.6倍に増えたという。

ところが、次のステップを目指していた矢先、親会社である米バックス・グローバルがドイツの総合物流企業シェンカーA・Gと統合することが決定。これに伴い、バックス・グローバル・ジャパンと、シェンカーと西濃運輸の合弁会社である西濃シェンカーも07年1月に統合された。

現在、伊藤氏は西濃シェンカーの専務執行役員の立場にある。

「それぞれ分野もテクニックも違いますが、専任コーチの皆さんから共通して学んだのは、会社を動かすのは人であるということです。人で成り立っているからこそ、人を動かす術がある。今は会社の規模も大きくなって、部下も増えましたが、モチベーションを高めて組織を機能させるというポイントは同じだと心得ています」