10月の日経平均株価の月間下落率は23.8%と過去最大を記録した。未曾有の金融危機に直面する日本。しかし、筆者は日本企業にとってはチャンスの到来という――。

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「ジタバタするな。日本のチャンスがきた」

この10月下旬に都内で開かれたあるシンポジウムでの、私の総括コメントである。シンポ自体は私の所属する大学院主催の「技術経営の力学」と題するもので、日本経済の将来を考えることがテーマではなかった。しかし時節柄、金融危機に関するコメントを最後にしたのである。

たしかに、日本の株価の大幅下落が衆議院の解散のタイミングすらも左右していることを思えば、シンポ会場に不安感が漂っていたのは仕方がないのかもしれない。事実、世界の主要国の株式市場の10月の月間株価下落率で20%以上下がった国を下落率の大きい順に並べれば、ロシア、ブラジル、中国、ベトナム、インド、日本、韓国となる。つまり、株価の下落率で見る限り、日本は新興国市場と同じグループに入る。それを日本経済の脆弱性の表れと見るか、日本の株式市場の投機性の表れと見るか。

私は、後者だと思う。同じ10月に日本の通貨はほとんどの世界主要国の通貨に対して、大幅に円高となった。それは日本が世界の中で相対的に強い立場になったことを意味している。たとえば、トヨタ自動車は大幅減益になりそうだが、それでもなお6000億円の営業利益が予想されているのに、アメリカではGMが政府の支援を求める、来年早々には現金が底をつく、など、GMの実質倒産が視野に入ってきたのである。

来年の経済成長の予測(IMF)を見ても、先進国の中でもっとも経済成長率が高くなりそうなのが、日本なのである。もっとも、その日本とてマイナス0.2%成長の予測で、それはアメリカのマイナス0.7%、ユーロ圏のマイナス0.5%よりは高い、という程度である。

そのような経済状況の中で、しかも円高でありながら日本の株価の下落率が新興国市場なみということは、いかに日本市場での換金売りが多かったかを意味している、と考えるのが自然であろう。アメリカのヘッジファンドを代表格に、ドルの現金を必要とする投資家、投機家が円高にもかかわらず(つまりドルベースの現金入手量が少なくなってしまうにもかかわらず)、それだけ日本市場で株を投げ売りしたのである。