史上最大の乱高下を繰り広げる株式市場。米国市場に連動し、金融危機が世界に広がっている。筆者は米国の市場原理主義の「3つの暴力」を説く。

株価を乱高下させた投機心理とは

世界中の株式市場で、史上最大の株価の乱高下が起きている。そのまっただ中の10月15日にこの原稿を書いているのだが、14日には日経平均が連休前と比べて14.15%も上昇した。史上最大の上昇率である。それはしかも、10日に9.6%、8日にも9.3%と、それぞれ戦後3位と4位の値下がりを記録した最悪の週の直後の上昇であった。

アメリカでも同じで、10月10日までの週は史上最悪の株価下落といわれたのに、13日には一転してダウ平均が11.1%もの上昇を記録。しかし、14日にはニューヨークの株価は少し下がった。それを受けて、東京の株価も15日は弱含みで始まっている。

つまりは、アメリカ横並びで、日本の株価が動いている。グローバル資本市場で資金が国境を自由に超えるから価格のさや寄せ現象は当然ではあるが、それはまた株式市場が投機的な資金の動きと投機的な心理に極端なほどに影響を受ける投機市場であることをも意味している。投機心理の国際的伝染である。

アメリカでも日本でも、乱高下したのは金融関連株だけではない。ほとんどすべての銘柄が同じように乱高下している。金融関連株以外の銘柄の株価が景気見通しの変化とともに動くことは確かだろうが、景気見通しが1日で平均株価を10%も上昇や下降させるほど破滅的に変化するとは思えない。やはり、株価の大幅下落は、アメリカの金融機関の巨大損失に端を発する換金売りに加えて、売り浴びせや狼狽売りが重なって、金融恐慌の心理をかき立てたことによるものであろう。いわば、極端な投機現象である。そこからの大きなリバウンドもまた、投機市場特有の現象である。

しかしそれでも株価は企業価値の指標といわれたら、地道に多くの産業の経営を行っている経営者たちからすれば、たまったものではない。しかも、株価変動の影響で企業利益の計算額が直接変わるような会計システムを押し付けられているのだから、ばかにするな、と言いたいほどの株価変動であろう。

これほど巨大な株価の下落は、その心理的インパクトも大きく、ほとんど戦争にも等しい暴力である。その暴力があるからこそ、銀行への巨額の資本注入がきわめてスピーディにアメリカでも欧州でも可能になったのであろう。しかし、そうした資本注入を必要とするような事態を招いてしまった責任を、誰がとるのだろうか。そのつけはどこへ回るのか。