2008年10月27日、日経平均は終値でバブル崩壊後の最安値7162円を記録した。相場の動きは常軌を逸している。筆者はこの乱高下の原因を説き明かす。
ジョージ・ソロスが説く「相場のプロ」の行動
株価の乱高下が止まらない。株価の値動きはまるでジェットコースターのごとく、急降下が起こったかと思うと、次には急上昇が起こる。株の取引をしようとしている人々は、売り買いのタイミングをはかるのに苦労しているだろう。ジェットコースターの例えは不吉すぎるかもしれない。日本の株価はジェットコースターと同じように、上下動を繰り返しながら結局はもっとも低いところへ落ちていくことを暗示しているからだ。
前回の経営時論で伊丹敬之氏は最近の市場の変調を市場の暴力と呼んでいるが、通常の事業を営んでいる会社にとって、まさに暴力的な動きである。事業会社、とくに海外で事業を行っている会社にとってより厄介なのは、為替相場の急激な変化と乱高下である。1日に為替が%単位で変化することも少なくないが、ぎりぎりまでコストを絞り込んでいる企業にとってその変化を相殺するコストダウン、あるいは値上げは絶望的に難しい。
今回は、株価に的をしぼって、なぜ市場で価格の乱高下が起こるのかを考えてみよう。最近のような乱高下が起こる最大の理由は、市場参加者が相場の落ち着きどころをつかめないからである。そのようなときに、市場参加者は、不安、狼狽、不信などの言葉で表現される心理になる。これらの言葉が新聞紙上をにぎわしている。実際に、狼狽としか思えない動きもある。このような不安心理に注目した行動ファイナンス、あるいは投資の心理学への関心が高まっている。
しかし、冷静に考えてみると、相場を形成するような市場参加者は、ファンドマネジャーなどの相場のプロである。相場のプロが相場の動きに翻弄されて狼狽して動くとは考えにくい。一時的な気分に流されないだけの経験と自己抑制力を持っているのがプロである。だとすれば、個人の心理から乱高下を説明するのは無理がある。彼らのプロとしての行動の仕方から説明しなければならない。それを説明しているのは、ヘッジファンドの総帥、ジョージ・ソロスである。彼の議論を理解するためには、そもそも株価はどのようにして決まるかの議論から始める必要がある。