真っ赤な口紅が注目を浴びた民主党のスーパースター

まず非営利の投票促進団体とブランドとのコラボが注目だ。ミシェル・オバマが立ち上げたNPO団体「When We All Vote」は、多くのデザイナー(しかも全員がマイノリティ)とコラボしながら投票を啓発するコレクション(VOTE 4EVER=ヴォート・フォーエバー)を作り、Tシャツから自転車用ショーツ、マスク、アクセサリーを販売。そのほとんどがソールドアウトしている。

ファストファッションのH&Mでは、旗艦店の大画面に投票を呼びかけるメッセージを出している。
写真=筆者撮影
ファストファッションのH&Mでは、旗艦店の大画面に投票を呼びかけるメッセージを出している。

さらなる注目は、ファッションアイコンとしても支持を集める政治家たちの出現である。最先端は、なんと言っても“AOC”ことアレクサンドリア・オカシオ・コルテスだ。

AOCは2018年の中間選挙で、ニューヨーク州選出の下院議員として史上最年少の29歳で初当選した。元バーテンという庶民派、元大統領候補バーニー・サンダースを支援するボランティア経験もあり、彼女が発案した環境対策を基軸にした経済政策「グリーン・ニューディール」は多くの若者を中心に強い支持を受け、最年少ながら民主党のスーパースターの地位を得ている。

その彼女が身に着けていたコスメブランド「スティラ」の真っ赤な口紅がインスタグラムなどを通じて大ブレーク。以来、AOCが身に着けるものは、まるでセレブのように注目を浴びている。

ブレザーや真っ赤なワンピース、パンツスーツなどいかにもアメリカの女性政治家らしいアイテムから、ジーンズにボマージャケット、黒いジャンプスーツなどカジュアルなものまでとてもスタイリッシュだ。

副大統領候補はコンバースのスニーカーで遊説

もう1人、ファッションアイコンとして急浮上したのが、民主党副大統領候補のカマラ・ハリスだ。

カマラも当初は他の多くの女性政治家と同様、パンツスーツのイメージが強かった。そんな彼女ががぜん注目されたのは、コンバースのスニーカーを履いて各地を遊説して回ったことである。黒のスキニージーンズにTシャツ、インディゴブルーのテイラード・ジャケット。足元は、コンバースのオールスターというスタイルが大きく注目、これで元検事という彼女の固いイメージが一気に吹き飛び、親しみあるものになったのは間違いない。

注目すべきなのは、彼らがトランプ大統領とは対照的にハイブランドを決して身に着けないことだ。

なぜ今注目の女性政治家は庶民ブランドを待つのか? この背景を知ると、アメリカの大統領選だけでなく、選挙後のアメリカの動きを知ることができる。この動きが一過性のものではなく、大きな潮流であることが分かるのだ。

①政治家の事情

票田を左右するミレニアル世代に訴えたい

前述したように今回の選挙は、特に民主党にとっては若者層の投票率がどれだけ上がるかが大きなカギとなってくる。

政治とファッションが急接近した今、若い有権者に対して身に着けるもので発信するメッセージは非常に重要だ。

そんな中で象徴的なのは、AOCがこの夏身に着けて話題を呼んだ「テルファー」のバッグだ。