宗教の「中国化」を国家的に推進
改訂版「宗教事務条例」(2017年8月26日公布)には、「憲法、法律、法規と規制を遵守し、社会主義核心価値観を履践し、国家統一、民族団結、宗教の和睦と社会の安定を擁護しなければならない」(第4条)と規定され、宗教が共産主義に適応するよう努めることが義務化されるとともに、国家による宗教管理の法治化が打ち出されています。これがいわゆる「宗教の中国化」と呼ばれるものです。
かつて毛沢東は「マルクス主義の中国化」を唱え、中国の社会実態に適合するようにマルクス主義の原理を修正しました。本来、中国のような農村社会はマルクス主義とは相入れないものであるにも関わらず、無理矢理に適合させようとしたのです。これと同じように、宗教は本質的に共産主義的唯物論の国家体制とは相入れないものですが、強引に適合させて「宗教の中国化」を推進しようとしているのです。これにより、仏教寺院で中国国旗が掲揚されるなど、「愛国宗教団体」なるものが昨今、多く生まれています。
また、この「宗教事務条例」には、「各宗教は独立自主と自弁の原則を堅持し、宗教団体、宗教学校、宗教活動場所と宗教事務は外国勢力の支配を受けない」(第36条)と規定されています。中国共産党が最も恐れているのは、国外の敵対勢力が国内の宗教団体をテコにして、反政府の動きを強めていくことです。宗教団体が工作活動に利用されることを警戒し、監視を強めているのです。
ローマ教皇庁も中国当局と「妥協」
2018年、ローマ教皇庁は中国当局が任命した7人の中国国内の司教を正式に承認することで合意しました。かつて、11世紀に、ヨーロッパで聖職叙任権闘争というものがあり、司教などの人事任命権を巡って、教皇と神聖ローマ皇帝が激しく争いました。今日、中国における聖職叙任権は中国当局にあることを、バチカンがあっさりと認めて妥協したのです。
およそ1000万人はいるとされる中国のカトリック信者は事実上、中国当局の監督下に置かれています。因みに中国当局が認めない聖職者を立てるキリスト教会は「宗教への外国勢力の支配」の排除を規定した「宗教事務条例」第36条に基づき、閉鎖させられています。