ウイグル人弾圧に冷淡な中央アジア諸国

新疆ウイグル自治区のウイグル人は本来、民族や宗教、文化の上で、中央アジア諸国の文明圏に属し、中国の一部に組み込まれるべき地域ではありません。「新疆ウイグル自治区」などと呼ぶのではなく、「東トルキスタン」と呼ばれるべきでしょう。

中国の不当な支配をウイグル人は被っていますが、中央アジア諸国は同胞のウイグル人を助けようとしません。中央アジア5カ国のうち、新疆に隣接するのはカザフスタン・キルギス・タジキスタンの3カ国ですが、これらの国は中国から経済支援を受けています。1996年、中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタンの5カ国による上海協力機構(上海ファイブ体制)を結成し、中国からの経済支援と引き換えに、ウイグル人の分離独立運動に介入しないと約束しています。

5カ国の中でも、カザフスタンは最大の人口規模(約3000万人)を擁し、近年、中国と連携を強め、中国マネーが流入し、急激に経済発展しています。中国は現代版シルクロード「一帯一路」の経済圏を強固に結び付けるため、デジタル人民元をグローバル決済の手段として流通させようとしています。

カザフスタンは石油を中国に輸出しています。決済はドルで行われるため、取引はアメリカに筒抜けになっています。デジタル人民元はドル決済を避けることのできる有効なツールであり、カザフスタンはその導入に最も熱心な国です。

こうした「一帯一路」の経済圏の形成に、カザフスタンをはじめ中央アジア諸国は積極協力し、同胞のウイグル人の苦しみを見て見ぬふりをしています。中国はカネの力で、民族の文明を分断しているのです。

党の方針に従う宗教団体は優遇

ウイグル人やモンゴル人、そして、チベット人らにとって、宗教こそが自分たちの文明を維持し、中国に抵抗する最後の砦です。これを失えば、中国に服属する以外にありません。

今日の中国政府の宗教政策は従来のようなマルクス主義の無神論に基づき、宗教を弾圧するばかりではなく、積極的に懐柔して利用しようとする「飴と鞭」の巧みさも兼ね備えています。共産党の方針に従わない宗教やその団体への弾圧を強める一方、方針に従う宗教団体を国家公認に指定し、法人格を付与して補助金などで支援優遇しています。