抗議デモに参加すれば逮捕
中国政府はこうした民族の文化教育を制限して、民族のアイデンティティを喪失させようとしているのです。そもそも、中国は宗教などの文化・文明が異なる他民族の生存圏に対し、何の正当な根拠もなく、不法な統治を続けています。
中国政府の教育強制に反発し、抗議デモを行うモンゴル人は逮捕されています。公安当局は抗議デモに参加した住民の顔写真を張り出し、逮捕に協力をした者には懸賞金を与えると布告しています。
ウイグルでも同じですが、逮捕者は刑務所から出て来られず、思想教育の名の下、強制労働を強いられます。刑務所で死亡し、家族が遺体を持ち帰りたいと懇願しても、当局は引き渡しを拒否します。中国政府は強硬政策で、反対者を一気に炙り出し、一網打尽に彼らを捕らえ、刑務所に送ろうとしています。
習近平が強調する「中華民族の共同体意識」
中国政府はこのような民族弾圧を、中国が一体化することのできる「正しい道」であると信じており、罪悪感をまるで感じていません。むしろモンゴル人に「科学的な言語」を与えて、文明化を支援しているとさえ考えています。
習近平指導部は9月24日と25日の2日間、「新疆工作座談会」という最高指導部会議を開き、この中で、習主席はイスラム教を信仰するウイグル族について、「中華民族の共同体意識を心に深く植え付けるべきだ」と述べ、思想や宗教の統制を徹底していくことを表明しています。また10月17日に終了した全国人民代表大会(全人代)の常務委員会では、「国旗法」の改正が可決され、少数民族の伝統的な祝日でも、来年1月から中国国旗の掲揚が義務づけられることになりました。
民族の言語や宗教を長期的に封殺し、気が付けば漢民族に完全同化し、皆が民族のアイデンティティを忘れてしまう、こうした目に見えない民族浄化が確実に進んでいます。このままでは、いずれ、ウイグルの問題、モンゴル問題、チベット問題そのものがなくなります。これこそ、中国が狙う「合理的な解決法」です。21世紀の現在において、このような露骨な民族浄化政策が許されるかどうか、国際社会はこの問題に真剣に向き合わなければなりません。