小学校入学前でも、はっきりした言葉を発さない

それからしばらくすると、「リクの便秘がなかなか治らないんです」と言って、お母さんがリク君を連れてきました。自宅近くのクリニックで酸化マグネシウムを処方されていたのですが、効果が出ず、排便のときに出血があるとのことです。便秘は私の得意分野ですから、薬の種類を変更して便を柔らかくするようにしていきました。

慢性便秘は簡単には治りません。ヨーグルトや果物ジュースが有効という意見もありますが、それだけで治るということはありません。リク君には1カ月に1回通院を続けてもらい、5歳になる手前でようやく薬を終了できるようになりました。

ソラ君とリク君とウミちゃんは誰かが風邪を引くと三人とも風邪を引きます。ですので、受診するときは三人がいつも一緒です。ところがある日、珍しくリク君が一人で風邪を引いて受診しました。リク君は6歳。半年後に小学校の入学を控えていました。リク君は、私が「胸を開けてね」と言えば、衣服を上に持ち上げて胸を出します。しかし自分からはっきりした言葉は発しません。「んん~、んん~」と唄うように音を出しています。それほど多動というわけではありませんが、椅子から立ったり座ったりをくり返しています。

双子の兄と同じ小学校に通うのか

診察を終えたあとで私はお母さんに聞いてみました。

「療育センターには行っていますか?」
「今はもう行っていないんです。療育の教室もあと半年で終わりです」
「そのあとは? 放課後デイに?」
「はい。今、どこへ通うか検討中です。それよりも、学校をどうしようかと」
「身辺のことはできますよね。特別支援学校ではなくて、特別支援級ですか?」
「そうなんです。でも迷っているのは、どこの小学校にしようかということなんです。自宅に一番近いのはA小学校です。そこにも支援級はあるんですけど、ちょっと離れたB小学校に行かせようかと考えているんです」
「と言いますと……」
「やっぱりお兄ちゃんのソラが気にするので。一学年でも違っていれば、同じ学校でもいいかなと思うんですけど、双子なので、同級生になります。一人が通常級で一人が支援級って、本人はどう思うかな? って。それに友だちから何か言われないかなって」