松江市の高校には「コロナをばらまいている」と非難が殺到
8月30日付の読売新聞の社説は「コロナと中傷 感染者を責めるのは理不尽だ」との見出しを掲げ、書き出しからこう訴える。
「新型コロナウイルスは誰でも感染する可能性がある。感染した本人や周囲の人、通っている学校などへの理不尽な中傷や差別をなくしたい」
新型コロナはだれもが感染し得るものだ。読売社説は具体的に事例を挙げて主張を展開する。
「サッカー部員らの集団感染が起きた松江市の高校には、『学校をつぶせ』などと非難の電話が殺到した。インターネット上に生徒の写真が転載され、『コロナをばらまいている』と書き込まれた」
「批判にさらされ、『眠れない』などと心身の不調を訴える生徒もいるという。感染への不安が生んだ行動かもしれないが、行き過ぎた反応だと言わざるを得ない」
「ラグビー部で50人超の感染者が確認された奈良県の天理大では、関係ない学生が中学校や高校から教育実習の受け入れを拒否されたり、アルバイト先から出勤を見合わせるよう求められたりした」
「地元の天理市長が『不当な差別であり、社会の分断につながる』と冷静な対応を求めたのは当然である。感染症を巡っては、ハンセン病やエイズ患者が差別や偏見にさらされた歴史がある。こうした過ちを繰り返してはならない」
過剰反応は社会を壊してしまう。感染症は社会の病でもある。私たちは悲惨な過去をあらためて学び直す必要がある。
医師や看護師に誹謗中傷を浴びせる行為は断じて許されない
読売社説は指摘する。
「国立成育医療研究センターが6~7月に行ったネット調査では、回答した7~17歳の子供の3割が『自分や家族が感染しても秘密にしたい』と答えた。感染したことを責められるのではないか、という恐れが根底にあるのだろう」
「秘密にしたい」という気持ちはよく分かる。しかし、新型コロナウイルスにはだれもが感染する恐れがある。まずは大人がそこをよく理解していかなければ、子供の心は閉ざされたままだろう。
読売社説は主張する。
「国内の感染者数は累計6万人を超えている。どんなに防止策をとっても、感染を完全に防ぐのは難しい。感染した人を責める言葉は、自分にも降りかかる可能性があることを認識すべきだ」
まったくその通りだ。新型コロナと同じ風邪やインフルエンザの気道感染の実態を見れば、よく分かるはずである。
最後に読売社説はこう訴える。
「感染者や医療従事者を攻撃する書き込みがないか、ネット上を監視している自治体もある。心ない言葉で傷つく人を出さぬよう、手立てを尽くさねばならない」
新型コロナ患者を救うおうと休みもなく懸命に働く、医師や看護師に対し、誹謗中傷の言葉を浴びせる行為は断じて許されない。