感染が下降傾向のいまは、社会を正常に戻す絶好のチャンス

「新規の感染者数に下降傾向が見えてきている」。西村康稔・経済再生相が8月31日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症の状況についてこう説明した。

西村氏のこの説明の根拠は、厚生労働省に対策を助言する専門家組織「アドバイザリーボード」の分析結果によるものだ。

マスクを着けて、ソーシャルディスタンスを保って電車に乗る日本の人々(2020年5月8日)
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アドバイザリーボードは8月24日、6月からの感染拡大について「7月27日から29日以降、緩やかな下降がある。7月末にピークとなったとみられる」との分析結果をまとめている。下降に転じた理由については「感染が広がりやすい接客を伴う飲食店の営業時間の短縮や、他人と距離をとるソーシャルディスタンス行動の浸透による可能性がある」としている。

感染が下降傾向のいまは、感染対策に疲れた果てた私たちの心と社会を健康で正常な方向に向かわせる絶好のチャンスだ。

ポケットからヨレヨレになったマスクを取り出して顔に着ける…

3密の回避、ソーシャルディスタンス、緊急事態宣言と感染対策を推し進めれば進めるほど、人の心と心との距離も遠くなる。感染拡大を防ぐことは重要だが、感染対策が行き過ぎれば、社会・経済活動だけではなく、人の心にも悪影響を与える。私たちは病んだ心を元気にすることも真剣に考えるべきだ。

社会全体が感染対策について過剰反応をしているのではないだろうか。たとえばマスク。マスクがないと店にも入れない。まともに人と会話もできない。マスクを着けずに歩いていると、周囲から白い目で見られる。そこで仕方なくポケットからヨレヨレになったマスクを取り出して顔に着ける。

こうした暗黙の協調を強いる「同調圧力」が強まっている。さらに、新型コロナ禍では「自粛警察」「分散型社会」「ウィズコロナ」といった言葉が次々と生まれた。そうした言葉に理解を示さない人は、強い非難を集める。