「20巻のうち8巻」が近現代の集英社版
——2016年刊の集英社版は、近現代に注力しているのが特徴です。
【馬屋原】全20巻のうち8巻分を、明治維新以降の近現代に割いています。新学習指導要領を意識しているのではないかと思います。近現代を意識しているだけあって、たとえば第20巻の第4章「インターネットの時代」などは、なかなかレベルの高い内容です。インターネットの歴史はもちろん、政治にもたらす影響などもしっかり描かれています。
——まんがについてはいかがでしょうか。
【馬屋原】まんがの中の情報量は抑えて、巻頭と巻末の資料を充実させているという形ですね。表紙を『少年ジャンプ』系の人気まんが家が描いているというのがポイントでもあるのですが、本編を描いているまんが家さんは各巻で異なりますので、巻によってばらつきが出てしまっているということはあると思います。
「各時代に詳しい人」が監修する講談社版
——講談社版は、2020年7月に発売されたばかりです。
【馬屋原】判型はKADOKAWA版と同じく、ソフトカバーで四六判。どうしたらKADOKAWA版に勝てるかということを、相当意識したのではないでしょうか。最大の違いは、資料編を巻頭に、しかも全32ページのカラーページのうちのほとんどを費やして掲載していることですね。これだけの資料を集めるのは、著作権が厳しい現代においては大変なこと。それだけ、資料そのものにも価値があるというメッセージを伝えたかったのだと思います。
——KADOKAWA版とは異なり、シリーズ全体の監修者を立ててはいません。
【馬屋原】講談社版は、時代ごとに監修者を立てています。つまり、その時代にくわしい専門の方が担当されているということで、プラスにとらえていいことなのかもしれません。ひとりの方が監修すればその歴史観が明確に出やすかったり、巻ごとのつながりがテーマとして出てきやすかったりしますが、それは専門性を取るか一貫性を取るかということで、どちらが優れているかということではないと思います。あくまで特徴ですね。