ピラミッド型の産業構造が崩れつつある

マイクロソフトの取り組みを踏まえつつ、ここで「これまでのマネジメント」と「これからのマネジメント」の違いについて私の考えを述べます。この違いをおさえておくと、本文の事例に対する納得感も増すことでしょう(図表2)。

これからの時代のマネジメント

旧来の産業構造は「ピラミッド型(統制型)」でした。これは自動車産業など製造業に最適化されてきたやり方で、トップあるいは企画部門が答えを持っていて、その他の部門は「トップや企画部門が決めたこと」に従って仕事をするスタイルです。

たとえば自動車メーカーであれば、「この車を作るぞ」とトップや企画部門が決めたら、製造部門、品質管理、管理部門、営業、マーケティングなどはその指示に最適化されたプロセスと指揮命令系統で「右向け右」で人が動く。いわゆる二次請け、三次請けと呼ばれるサプライヤーも、自動車企業を頂点とするピラミッド型で働きます。

個人においても、上の言うとおりに働いて、企業の人事異動に従って全国を転勤したり、どんな理不尽な仕事であっても耐え抜きさえすれば、一生安泰に暮らせました。定年後も、年金で、ある程度裕福な暮らしができた。

ピラミッド構造はこれまでの時代における勝ちパターンであり、最適モデルでした。しかし、それが変わってきています。

これからは「報・連・相」より「雑相」が活きる

従来のマネジメントにおけるコミュニケーションは、「報・連・相(報告・連絡・相談)」を基本としています。

「報・連・相」は一見すると、下から上へのボトムアップコミュニケーションのように見えますが、「報告の内容や仕方」「相談のタイミング」など、上の人が規定しているケースが目立ちます。「もっと事実を踏まえて報告しろ」「体裁を整えた資料を用意してくれ」「今は忙しいから後にしてくれ」などです。

もちろん「報・連・相」が悪いと言いたいのではありません。業務プロセスが完全に決められていて「そのプロセスや手順に従えば答えを出せる仕事」においては合理的なコミュニケーションであるといえるでしょう。それこそ軍隊のような統制型組織においては、きっちりとした「報・連・相」が勝ちパターンに成り得ます。

しかし、オープン型、コラボレーション型の組織においては、「報・連・相」より「雑相」(ザッソウ)のコミュニケーションが威力を発揮します。「雑相」とは、「全社員リモートワーク」を実施しているIT企業、ソニックガーデンの社長・倉貫義人氏によるコンセプトで、「雑談と相談」および「雑な相談」を意味します。