古代から続いている「ハグ」を簡単にやめられるのか

家族に怒られはしましたが、漫画家である私は、一般的な人の何倍も普段から人の動きを何気なく見ています。潜在意識下でどうしてもそうした観察眼のスイッチが入ってしまうのですが、そうやってイタリアや中国、アメリカや中東など、様々な文化圏のいろんな人たちのあらゆる習慣や特徴的な仕草などを見てきました。

ヤマザキマリ『たちどまって考える』(中公新書ラクレ)
ヤマザキマリ『たちどまって考える』(中公新書ラクレ)

ウイルスの感染対策にも、人々の生活を観察する「日常風俗観察知識者」「人類の行動学者」のような専門家を加えるべきじゃないかという気もしますね。ウイルスの専門家が焦点を当てない人間の行動といった側面を知ることで、見えてくるヒントやアイデアが確実にあると思います。

感染症の専門家や歴史の記述を見ても、疫病には第2波、第3波が必ず起きるという指摘がなされています。この状況のなかで今後、イタリア人の人との距離の近さという習慣はどうなっていくのか。たぶん、完全に途絶えることはないでしょう。もちろん「1メートル」のソーシャルディスタンスのように、何らかの折り合いはつけていくと思いますが、人間の習性は抑えきれるものではありません。イタリア人にとってのハグ(抱擁)など体を触れ合う習慣は、古代から続いてきているわけですから、完全に控えるのは難しい気がしますね。

フラットな目線で観察したならば、至近距離でのコミュニケーションをそのまま貫いて、それでも生き延びた人たちが、ウイルスと共生しながら生きていくことになるのかもしれません。要するに、ウイルスによる人類の淘汰が起きる。ほかの生物の生態を踏まえても、それこそがウイルスの本質的な目的なのではないかという気がしてならないのです。

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