菊地氏は興味の赴くままに読書をするので、常に3~4冊を同時並行で読んでいるそうだ。飛行機で移動する際も、「飽きたら別の本を読めるように」3冊を機内に持ち込む。
「そんなときに限って、あ、マーカーを忘れた、しまった! なんてこともあります(笑)」
もちろん読んでみて面白い本もあれば面白くない本もある。それでも最後まで読み通してみるのが菊地流だ。
「どの本もタイトルがキャッチーですから。読み進めるのが難しい本だと、まだこんなにページが残っているのかと結構苦痛に感じます(笑)。ノートに書かれたメモもたったの2~3行ということも。でも、その2~3行が後で役に立つことがあります」
後からメモを見直してみると何かの発見につながることもあるのなら疎かにできない。
▼50代/経験と知識で「仮説」を立てて考える
50歳を過ぎるとそれぞれの職業人生のゴールがある程度見えてくる。定年退職に向かう人もいれば、経営側に向かう人もいるだろう。それぞれが50代で学ぶべきことは何か――。
【菊地式】知の領域の広げ方
50代の勉強法はそれまでとどう変わるのか。菊地氏は自らの経験から「40代から自分の領域でアウトプットを続けてくると、50代に入り逆にインプットの必要性が出てきます」という。
菊地氏がインプットの必要性を強く感じたのは2020年、京都大学で開催している社会人向けMBAコースの講師を引き受けたことがきっかけだった。
「経営論を教えるためにはもう1度しっかりとその理論を学ぶ必要があります。また、私はファイナンスや経営の実践には自信がありますが、マーケティングやブランディング、ヒューマンリソースなどはあまり強くないので、経営を語るうえでそれらを補強しなければなりません」
また、改めて経営論をひもといてみると面白ことに気づいた。20代にビジネススクールで学んだときとは違い、経験を通じて理論を理解できたのだ。
「経営戦略を立てるために様々なフレームワークを使います。たとえば市場成長率とマーケットシェアで事業を4分類するPPM。一番ダメなのが低成長・低シェアの『負け犬』です。『負け犬』に分類され、教科書的にはやめなければいけない事業であっても、経験値を積んでくると理論だけでは見えてこない可能性が見えてきます。たとえば、市場成長率とマーケットシェアが低い事業があるとします。しかし、業態単位で見ると、圧倒的なシェアがあり、かつシニアやインバウンドの市場にアクセスできたりするわけです。ならば高成長率・高シェアの『花形』に位置付けてもいいのではないかと考えられるのです」