年間約10兆円が動くサクラレビュー
今回の謎の種送りつけについては、受け取った本人に書かせるのではなく送りつけた業者自身が書き込みをするわけですが、それにしても中国販売業者のサクラレビュー詐欺は組織的に取り組み、このサクラレビューによって大きな利益を得ています。Amazonはニセレビューを撲滅するために、2015年から1000件以上のニセレビュー業者を相手取って訴訟をしています。しかし、あまりに詐欺グループの数が多いために追いついていないのが現状です。
検察日報の報道によると、虚偽の購入を行い、高評価レビューを書き込む個人会員の総数は、2000万人以上とされ、年間6000億元(約10兆円)以上の資金が動いていると言われます。このようにサクラレビューの世界は、われわれの想像を絶する規模の資金と詐欺集団によって構成されている世界なのです。
しかしながら、今回の謎の種は本当に「ブラッシング詐欺だけ」なのでしょうか。ニセの高評価レビューを作るためだけにするなら、米国、欧州、日本とあまりにも広域です。
炭疽菌を送り付けた死亡事件も
ブラッシング詐欺以外の可能性も取り上げます。
送りつけ商法
コロナ禍においては、マスクの送りつけ商法詐欺が横行しました。マスクの品薄により、誰もがマスクを欲しているタイミングで、頼んでもないマスクを送りつけ、問い合わせ先に電話をすると高額な請求をされたり、別の商品をセールスされるという悪徳な手法です。
今回の種も世界的に発送していますから、もしも送りつけ商法だった場合は詐欺業者に利益をもたらすことになります。
国際ワン切り詐欺
見知らぬ海外からの着信、応答しようとするとすぐ切れてしまう。その後、折返し電話をかけると通話料の一部が業者に流れる「国際ワン切り詐欺」と呼ばれる手法が2017年ごろに話題になりました。NTTドコモは問い合わせが続いた番号を公開し、注意を呼びかけていました。
今回の種についても、不審に思った受取人からの電話問い合わせを狙っている可能性があります。かけてしまったら最後、高額な通話料が請求されてしまうものです。
個人情報の取得
SNSを中心に次々と「種が届いた」と画像がアップされています。発送元には住所が分かっているわけですから、SNSアカウントと情報をひも付けられる可能性があります。それにより、新たな詐欺のターゲットにされてしまう恐れがあるため、誰あてに届いた荷物かを発送元に知らせないためにも、安易にSNSに画像をアップすることは危険が伴うでしょう。
今回の件はおおむね、詐欺の可能性が高いと見られますが、バイオテロの可能性も捨てきれません。過去には米国で炭疽菌を送りつけることで、命を落とす事件も起きています。また、既存の生態系を破壊する侵略的外来種の可能性もあり、安易に種を植えることは危険が伴います。
いずれにせよ、送りつけてきた者の正体が不明である間は、引き続き警戒が必要なのは間違いありません。