なぜ、ラベルは偽装され新興国から送られてきたのか?

実際に、一部地域においては届いた種のパッケージに貼られた「中国郵政(China Post)」と印字された国際郵便のラベルを剝がすと、その下にはベトナムの郵便ラベルが貼られているというのです。しかしながら「詐欺の可能性」を考えると、あながち「中国は本件とは無関係」とも言い切れないのです(後述します)。

今回の事件について、ラベルが偽装されていたのは日本だけではないようです。米・カリフォルニア州のメディアVentura County Starに掲載された「Mystery seeds from China, elsewhere in Asia elicit warning to county residents」によると、中国、ベトナム、キルギスからの発送であるかのようにラベルが偽装されていたとあります。発送元が偽装されていたことで、検出されずに米国税関を通過できたというのです。

そしてなぜ、この種はいずれも新興国から送られて来たのでしょうか? それは、小物は米国や日本国内より、新興国から送るほうが安いケースがあるためなのです。

中国発送のAmazon商品が「送料無料」のワケ

国連傘下の万国郵便連合(UPU)では、新興国支援を目的に一部の国からの郵送料を安くする条約が存在します。これにより、日本のAmazonなどで買い物をする場合においては、中国発送の商品は「送料無料」になっていることが多く、「なぜ遠距離輸送で送料無料になるのか?」と不思議に感じる人もいるかもしれません。中国からは安く郵送で送れる代わりに、受け取る国(日本)が差額負担をすることになるというカラクリがあったのです。

米国でも万国郵便連合の取り決めによって、サンフランシスコからニューヨークへの送料より、北京からニューヨークへの送料が安くなる事態が起こっています。2018年にはトランプ政権が「中国へ不当な優遇措置となる」と離脱を表明するも、2019年に郵便料金の値上げをすることで、本条約への残留が決まっています。

詐欺を目的に送りつけたということであれば、発送元もできるだけ低コストに抑えることで利益を最大化できます。こうした事情により、輸送コストが安い新興国からラベルを偽装して送られたものと考えられます。