健康の「経済的価値」はどの程度のものなのか。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、生涯健康だった人と病気がちで人生を閉じた人の総収入や総支出をシミュレーションした。その結果、85歳で他界と設定すると、預貯金には約5000万円の差があった。黒田さんは「これからはむしろ『死ねない』というリスクを考えておいたほうがいい」という――。
女性医師とシニア男性
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不健康な人に比べ、健康な人はいったいいくらトクをするのか

新型コロナ感染拡大によって、われわれを取り巻く環境は一変した。

コロナを想定した「新しい行動様式」は、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、手洗いなどの感染対策だけでない。移動や買い物、レジャー・スポーツ、食事、そして、働き方すら、これまで私たちが行っていた日常生活をことごとく否定するものだが、それらはすべて「コロナに感染せず健康体を維持する」ことが目的だ。

コロナショックを受け、また日本人の寿命が延び、働く期間も長くなる中、「健康」の価値がこれまで以上に高まっている。ファーストプライオリティは、なにより健康なのだ。

では、その健康の「経済的価値」はどの程度のものなのか。

健康で長生きすれば、医療費や介護費用もかからない。節約できて、お金も貯まる。長く働くことができ収入を得られる。でも、病気がちであれば、そうはいかない。

健康の良しあしによって、「経済的価値」がどう変化するのか。

健康体vs現役時代から病気がちvsリタイア後に発症、の3つのケース

今回、購入したばかりのタワーマンションに住む「40歳独身・単身世帯・会社員(営業職)」が85歳で他界するという設定で、45年間の収入や支出の変化、医療費や介護費などについて、3つの「健康度」のケース別に試算してみた。不健康な人に比べ、健康な人はいったいどれほどトクをするのか。

3つのケースに共通する前提条件は以下の通り。

【40歳独身・単身世帯・会社員(営業職)】
収入
▼年収800万円(可処分所得590万円)
▼退職一時金 もらう時期と額はケースごとに異なる
▼公的年金 支給開始時期と支給額はケースごとに異なる
支出
▼生活費月20万円(住居費などを除く、退職後は8割として計算)
▼住宅ローン月額11万7538円、年額141万456円(ボーナス払いなし)。ローンとは別に、固定資産税、火災保険料、共益費・修繕積立金など住居費で年40万円。
▼趣味は旅行。旅行は毎年2回(年間予算15万~50万円)。
▼加入した医療保険(入院日額1万円、手術給付金有、終身払保険料月額約4000円)。
▼家電の買い替え費用など年20万円
▼自宅リフォームに生涯でトータル300万円
▼葬式費用100万円
預貯金:500万円(40歳時点)