米国ではコロナ対策として「必需品」に格上げされる可能性

かつて来日したマドンナがほれ込み、レオナルド・ディカプリオなどハリウッドスターも自宅で愛用しているという日本製の温水洗浄便座は、温水の温度や噴射の角度をコントロールし、温風乾燥に脱臭効果、ノズルや便器内の自動洗浄にふたの自動開閉など、他国の類似製品を圧倒するハイテク技術を誇る。

米ブルックリンの自宅の一角でAirbnbを営む日本人女性は、旅行者用に貸し出している居室のトイレにウォシュレットを備え付けている。利用者が口コミサイトに書き込んだレビューのほとんどが「ウォシュレットを使って感動した」という声だったという。

欧米人にとって、洗浄便座は、ぜいたく品やオプションのようなものだったかもしれない。しかし、コロナ時代には必需品に格上げされる可能性が見えてきた。

メディアの注目度も高まっている。ニューヨーク・タイムス(NYT)が4月の記事で言及している。テキサス大の医療専門家の話として、お尻は「ウォシュレット」や「ビデ」のような「トイレ用の洗浄専用機器」(bidets or toilet attachments)を使った方が、衛生上も環境保全の観点からも、トイレットペーパーよりはるかに良いと推奨、新型コロナウイルスが排せつ物から見つかったという調査も例示に挙げている。

TOTOニューヨークショールーム内観=2019年3月撮影
写真提供=TOTO
TOTOニューヨークショールーム内観=2019年3月撮影

米国三大TVネットワークNBCの電子版でも4月、米国メーカー製の商品などと比較したトイレ用の洗浄専用機器に関する特集を紹介。トイレットペーパーを作るために大量の水が必要なこと、お尻を洗う方が水量は少なく環境には優しいこと、紙でふいても雑菌は完全には取り切れないこと、お尻の周囲の皮膚は薄くて敏感なので、水で洗う方が良く、最終的には経費を節約できる、といった医療関係者の解説を紹介している。

日本で進化した温水洗浄便座のルーツ

現代の欧米人にとってなじみの薄い洗浄便座だが、実はそのルーツは日本ではない。17世紀にフランスで誕生した「ビデ」だ。仏語で子馬(Bidet)の意味を持つ。海外のホテルでトイレの横に備え付けられた、水栓付きの楕円形の機器を見て使い方を思案した経験を持つ日本人も多いのではないか。

毎日お風呂に入る習慣のない欧州で、またがって、水栓から出る水で局部を小用後や生理時に洗浄するほか下半身、足などを洗うために使われた。1917年創立のTOTOが「便利な商品」として大正時代に商品化したが、日本では毎日入浴する習慣があるせいか浸透しなかったという。