「英語を英語で教える」ことは現場の教師には不可能

【三宅】いま中高では「英語は英語で教えることを基本とする」となっていますが、これはどうお考えでしょうか?

【清水】文科省から通達がきたのは2011年で、それ以降、「授業は英語でやるように」とずっと言われています。しかし、実際にやっている先生は私が知る70~80人の英語教員の中で、1人だけです。

【三宅】なぜでしょう?

【清水】文科省の掲げる理想と現場の実情との乖離が大きいからです。たとえば当初は「文法の授業も英語でやりなさい」と言われたのですが、日本語で説明してもわからないものを英語で説明してわかるわけがありません。

【三宅】私もそう思います。

【清水】あとは先生の英語力の問題もあります。2003年から2007年までの5年間の間に日本全国の中高の英語教員を対象とした研修があったのですが、1年間でたった10日だけ。それで急に授業が英語でできるようになるわけないですよね。

【三宅】先生が自己研鑽を続けることは大切かと思いますが。

【清水】もちろんです。しかし、実際には多くの先生は、部活の顧問など自分の専門以外のことで時間を取られています。私はそれがなく、独学で英語の勉強を続ける環境にあったのでかなり恵まれていました。

小さい頃に発音を鍛えておけば後々楽になる

【三宅】今年から小学校5年生で英語が教科になり、3年生から必修になりました。小学校における英語教育についてはどのようにお考えですか?

【清水】基本的には反対です。自分自身の小学生の頃を振り返ってみても、日本語を満足に喋れないのに英語を勉強するということは考えられません。とはいえ、小さい頃に発音を鍛えておけば後々楽になるという印象は強く持っています。

【三宅】耳で覚える英語ですね。

【清水】はい。かつて教え子と一緒に本を書いたことがあるのですが、彼の高校での英語の成績は平凡でした。ただし、クラスのなかで彼だけほぼネイティブに近い発音をするのです。最初は帰国子女なのかなと思ったくらいで、「どこで勉強したの?」と聞いたら、「小学校のときに英会話スクールに通っていました」と。大学を卒業したらイギリスに行きたいという夢を持っていたそうです。

【三宅】そうですか。当校のスピーチコンテストは、キッズ部門と大人部門があるのですが、発音やイントネーションは子供のほうが圧倒的に上手です。発音が良いと英語を話すことに自信が持てます。また、自分で発音できる音は聴き取りもできるので、リスニング力も上がります。そういう意味で、小さい頃からネイティブの英語に触れておくことは意味のあることだと思います。

【清水】そうですね。だから小学校でもそのあたりを強調しながら英語に触れさせるのがいいと思います。

イーオン社長の三宅義和氏(左)と英語教材開発者の清水建二氏(右)
撮影=原 貴彦
イーオン社長の三宅義和氏(左)と英語教材開発者の清水建二氏(右)
(構成=郷 和貴 撮影=原 貴彦)
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