断言できるのは、転職活動のために電話やパソコンなど会社から貸与されたものを使ってはならないということだ。会社の貸与物を許諾なしに私的に利用することは刑法235条の窃盗罪にあたる。実際にそれを理由に社員を解雇し、裁判でも解雇を有効とした判例もある。

たとえば、勤務時間中にネットを使って株取引をしていた社員が解雇され、裁判で解雇は有効とされた判例がある(東京地裁八王子支部・2003年9月)。裁判所は、利用回数や時間の長さなど解雇に至った経緯を踏まえ、社会的に見て合理的理由が存在するかどうかで解雇が有効か無効かを判断する。このケースでは、裁判所は単にアクセスの時間だけではなく、売買の判断を下すために相当の時間にわたり仕事をしていなかったとみなし、解雇を有効とした。

転職活動の場合も同様である。会社のパソコンや電話を使って人材紹介会社や転職先企業との連絡を頻繁にしていたとなると問題になる。

仮に転職活動が発覚しても、即座に会社がアクションを起こすことは少ない。会社側は一定の期間に、どこにどれだけの回数でアクセスがあったかという証拠を掴んだうえで解雇するケースが多い。また、パソコンや電話だけではなく、コピーやFAXを使っていたことも証拠になる。

会社から貸与されたものを使う場合、すべてが会社に筒抜けになっていると認識すべきだ。現実に、電話が盗聴されていたというケースもある。自分の行動が会社から見て、友好的な行動なのか敵対的な行動なのかを判断し、転職のように、会社から敵対的と見られても仕方ないと思われる場合は、会社のものは使わないのが鉄則だ。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=溝上憲文)