価格競争から抜け出すためのアメカジ路線強化が失敗

業績は大きく悪化しており、岐路に立たされている。2019年9月〜20年5月期連結決算は、売上高が前年同期比31.5%減の391億円、最終損益は33億円の赤字(前年同期は23億円の赤字)だった。売上高は販売不振が響いた。最終損益は、販売不振のほか、店舗閉鎖に伴う損失や収益性が厳しい店舗の減損損失、休業店舗の賃料などの損失を特別損失として計上したことが響いた。この背景には、商品戦略の失敗がある。

2019年4月の決算説明会で、ライトオンは原点回帰となるアメリカンカジュアル(アメカジ)商品を強化する方針を打ち出した。川﨑純平社長は、「『ライトオンらしさとは?』を自問自答してきた。お客さまは当社にアメカジを期待している。ジーンズを中心に品ぞろえを強化し、応えたい。『ジーンズを買うならライトオン』を定着させたい」と述べていた。さらに人気女性誌と「#アメカジレディになろう!!」というキャンペーンを展開し、インスタグラムなどでジーンズを使ったコーディネートを提案していた。

ライトオンはショッピングセンター(SC)への出店が多いことから、それまではSCに来る不特定多数の人に向けた商品を打ち出していた。だがコンセプトが曖昧になったことで競合との違いを打ち出せず、価格競争に巻き込まれてしまった。アメカジの強化は、この状況から抜け出すための施策だった。

しかし、このアメカジ強化は裏目に出た。品ぞろえが極端に偏ってしまい、20〜30代を中心に客離れを招いてしまった。また、全面的な品質向上を進めた結果、商品単価が急激に上昇してしまい、10月の消費税増税も相まって、顧客に受け入れられなかった。結果、19年9月〜20年2月期の既存店客単価は14.9%増と大きく伸びたものの、客数が27.3%減と大きく落ち込んでしまった。前述の通り、売上高も16.5%減の大幅減となっている。

アメカジチェーン各社がうまくいかなかった

アメカジ偏重では厳しいだろう。それは、アメカジを主軸にした衣料品チェーンの撤退が相次いだことからもわかる。

紳士服大手の青山商事が12年から日本で展開を始めた「アメリカン・イーグル・アウトフィッターズ」は、不振から19年に全店舗の閉鎖に追い込まれた。米ギャップの「オールド・ネイビー」も12年に日本に上陸したが、17年1月の会計年度末までに撤退を余儀なくされた。

これらアメカジチェーンが不振に陥った理由はいくつか挙げられるが、アメカジ自体が今はやらないことが大きい。アメカジは1980年代後半から90年代前半にかけてブームになったが、徐々に下火になっていった。今でもコアなファンがいるが、それだけで全国規模のチェーン店を支えるのは難しい。