申請の賢者フリーライター和田潮の「申請のススメ」

我が家には育休中の妻と新生児を含む3人の子供がいるが、極力働かずに家族と過ごす時間を最優先にしている。都営住宅に住み、野菜卸業者から格安で買った野菜で自炊するなど、支出を抑えた生活を送っている。ただ無計画に稼ぎの少ない夫をやっているわけではない。将来を考え、家計収支を計算し貯蓄・積み立て・投資をしている。

日本の社会保険制度を利用していれば現状で全く問題ないと判断して、低収入・低支出を選んでいる。なにかあっても申請すればもらえるお金や支払いが免除される社会の制度は多いからだ。家計のために、制度をしっかりと把握し利用していれば、稼ぎが少なくとも安心して日々を送れる。

実際に私が体験した例を挙げよう。かつて肺に穴が開く気胸という病気で入院したことがある。半月ほどの入院で内視鏡手術を受けた。支払い(3割の自己負担)は約30万円だった。貧乏ライターには大金だ。しかし「高額療養費制度」の申請をすれば(私の場合、自己負担限度額は3万5400円のため)約26万円が戻ってきたのだ。民間の医療保険に入っていなくとも、すでにある国の制度を活用するだけで出費の大部分をカバーできるのだ。

申請の仕方としては、支給申請書の必要事項を記入。病院の領収書を添付(健康保険組合や所得・入院の理由により必要書類は異なる)して郵送する程度だ。書類の記入は5分もあれば書き終えられる内容。それだけで約3カ月後に支給される。事前に医療費が高額になることがわかっている場合は「限度額適用認定証」の交付を受けておけば、窓口での支払額は自己負担限度額までとなる。また、家族内での医療費(2万1000円以上)を合算することも可能だし、無利息で「高額医療費貸付制度」を利用することも可能だ。

すべての制度を事前に把握しておくことは難しい。ただ、前もって自分に関係する可能性がある制度の存在を頭の片隅に入れておくことはできるだろう。あとは、いざ結婚や出産、病気や事故など人生のイベントやトラブルに直面した際に詳細を調べて申請すればいい。ほかになにか制度はないかとチェックする癖をつけておけば十分だ。

制度を知らないことや、面倒がって申請しないのはとてももったいないことになる。長年、保険料や税金を払い続けているのにせっかくもらえるチャンスを生かさないのはまさに国の奴隷になることを自ら選んでいるようなもの。受給は国民としての権利なのでぜひ申請をしてほしいものだ。

申請の賢者が国・自治体からもらっているお金一覧/申請の賢者、驚きの低コスト生活
(構成=神里純平)
【関連記事】
東京で再爆発!第2波到来でマスクは品薄になるか。いま準備すべき意外なものは
目も当てられない悲惨な末路…「ペイペイの猛毒」にやられたキャッシュレス企業
東京220人…感染症医師が警鐘「自粛ムードを一気に解除すると、2週間で元の状態」
「コロナ禍で年収1000万から無職に」59歳独身を襲った悲劇
「そろそろ結婚したい」年収400万円男性を、世の女性は相手にするか