小規模店ではキャッシュレスのデメリットが目立つ

ある程度の規模に達した店舗では、毎日のレジ締、銀行への入金業務を短縮できるほか、現金盗難を防止でき、キャッシュレスにはメリットがあります。しかしながら、個人経営などの小規模店では、キャッシュレス決済はデメリットも多いというのが本音ではないでしょうか。

第一に、クレジットカード、電子マネーなどの決済手数料は高額であり、利益率を悪化させます。キャッシュレス決済の店側が払う手数料は3%程ですが、これは粗利に対するものではなく、売上に対してかかります。すなわち、顧客が、現金ではなくキャッシュレス決済を選択した時点で、店側は利益率がマイナス3%となります。米国ではこれら手数料が1.8%程度、欧州は0.2~0.3%、中国では0~0.45%と低く、そして韓国でも0%のゼロペイというサービスがあります。日本は、諸外国に比して非常に高額な手数料となっています。

第二に、決済回数の少ない小規模店では、業務効率化に繋がりません。現金またはキャッシュレス決済、いずれにおいてもレジ対応をしなければなりません。もともとPOSレジが普及していたこともあり、その後の会計記帳業務もキャッシュレスだからといって特段楽になることはありません。経済産業省における2018年1月調査によると、キャッシュレス導入による売上効果についても「変わらない」、「効果が分からない」の回答が最も多く、売上影響はないにも関わらず、決済手段が増えることでレジ業務がより煩雑になるだけとも言えます。

第三に、資金繰りの悪化です。現金決済であれば即時回収できていた資金が、キャッシュレス決済では翌月入金となります。小規模な飲食店などでは、現金商売の慣行が残っており、仕入品の支払いを現金で行えば、キャッシュアウトが先行することになります。

キャッシュレスに抵抗があるのは若年層

利用者においても、お金の使い方に対する人生経験や所得によって、キャッシュレスへの抵抗感は異なります。年齢が上がるほどキャッシュレス変化になじめないイメージがありますが、実は、若年層の方がキャッシュレスに抵抗があることがわかっています。

博報堂生活総合研究所によれば、男性よりも女性が、高齢者より若年層が「キャッシュレス社会にならない方が良い」と回答しています。反対する理由として、「浪費しそうだから」、「お金の感覚が麻痺しそうだから」が上位に挙がっています。

また、キャッシュレス同様、マイナンバーカードの普及率が16%と非常に低い水準であることからも推察できるように、「なんとんなく管理されるのが怖い」というイメージで、登録を敬遠している方が多いのも事実です。所得を正確に把握されたくないと考える人は、電子記録として残るキャッシュレスを積極的に使いません。

所得捕捉率の業種間格差を示す「クロヨン・トーゴ―サンピン」という言葉があります。クロヨンとは、税務署が把握しているサラリーマンの所得を9割とすれば、自営業者が6割、農林水産業者が4割程度ということを表しています。トーゴ―サンピンは、サラリーマンは10割補足されているが、自営業者5割、農林水産業者3割、政治家は1割程度という意味です。この言葉の真偽は定かではありませんが、確定申告を自ら行わないサラリーマンに比して、節税余地が大きいその他職業があるのは事実です。

実際、「夜の街」関連の職業の一部では、いまだに現金手渡し報酬で、正確な確定申告をせず、銀行口座へ入金することなく現金保管している方も多いと聞きます。これら脱税を意図的に行っている層は、口座を通した資金決済手段を選択しません。