なぜ海外ではキャッシュレスが普及するのか
海外において、キャッシュレスが普及している理由はさまざまです。欧米ではもともと小切手取引が慣習化しており代替が容易であったことやクレジットヒストリーが重視される背景があります。スウェーデンでは、強盗事件などへの犯罪対策、冬季期間の現金輸送が困難であり削減ニーズがあったこと。中国では、脱税、偽札の犯罪防止に加え、広大な国土の現金輸送コスト削減の必要性があり国家主導で推進。お隣の韓国では、日本と同じく脱税防止の観点からクレジットカードの普及を促進しますが、宝くじの権利付与や利用額の一部を所得控除できるメリットを提示することで普及が進みます。
かたや、日本においては治安の良さ、きれいな紙幣と偽札流通の少なさによる現金に対する信頼性の高さに加え、いたるところにATMがあることから現金の取扱いが容易であり、キャッシュレス決済の普及はいまだ低い状況です。
「PayPayの猛毒」でプレイヤー集約化
2019年10月の消費税増税に合わせて始まった、キャッシュレス決済によるポイント還元制度が今年6月で終了しました。
それまでの間、スマホ決済サービスが乱立、各社シェア争いにしのぎを削り、近年ではプレイヤー集約期に差し掛かっています。19年11月にPayPayとLINE Pay、20年2月にメルペイとOrigami Payが統合、メルカリとNTTドコモは業務提携を行い、代表プレイヤーの集約化が相次いでいます。
PayPayは、「100億円あげちゃうキャンペーン」、1000円相当が戻ってくる「まちかどペイペイ」などの販促を行い、2020年6月29日時点で3000万人が登録するサービスまで成長。決算状況からも、先行投資として顧客の囲い込みに莫大な販促費を費やしていることが伺えます。20年3月期、売上が約90億円に対して、販促費を含む販売費及び一般管理費はその約10倍の890億円となっています。その結果、キャッシュレスサービスの利用率において、クレジットカードに次いで、第2位がPayPayとなっています。(日経クロストレンド2020年1月調べ)
このような巨額の先行投資を行う理由は、数年で投資額を回収できる想定があるためです。ただし、これはあくまで手数料率、加盟店・利用者数を維持・拡大できればの話です。キャッシュレス・ポイント還元が終わった今後、加盟店・利用者の離脱をいかに防ぐかが課題となりそうです。