<strong>JFEHD 數土文夫 社長</strong>●1941年、富山県生まれ。北海道大学工学部冶金工学科卒業後、旧川崎製鉄に入社。2001年川崎製鉄社長、03年JFEスチール社長を経て05年から現職。「試合後仲間のいい点をコメントする、大リーグの岩村選手は素晴らしい」。
JFEHD 數土文夫 社長●1941年、富山県生まれ。北海道大学工学部冶金工学科卒業後、旧川崎製鉄に入社。2001年川崎製鉄社長、03年JFEスチール社長を経て05年から現職。「試合後仲間のいい点をコメントする、大リーグの岩村選手は素晴らしい」。

部下育成という観点でいえば、私のサラリーマン人生で見てきた上司は大きく2つのタイプに分かれる。1つは目についた部下の欠点を的確に見抜いて指導してゆくタイプ。もう1つは、部下の欠点はわからなくても、長所を見出してそれを評価してゆくタイプである。

サラリーマンとしてどちらが優秀かといえば、厳正な人事評価ができる前者の上司なのだろう。しかし、どちらの下でより部下が育つかといえば、絶対的に後者の上司である。私の経験上、欠点や短所を直そうとするよりも、長所を認めて、褒めたほうが部下は育つ。

スポーツの世界でも欧米人のコーチは選手をよく褒める。いいところから伸ばして、課題がある場合には「あなたのいいときはこういうフォームだよ」という直し方をする。それが後にビジネスコーチングへと派生したように、成長させたいときはまず長所を起点に伸ばしてゆくべきで、欠点を直すところからスタートするのはなかなか難しい。

相手を褒めたり、長所を認めることの大切さは現場でエンジニアをしていたときに学んだ。たくさんの人たちが連携する現場でいい仕事をしようと思ったら、互いのいいところを認めていかないと物事は進んでゆかない。

部下を評価しすぎて人事課から苦情

人間は360度全方位に能力を発揮できるわけではない。自分の得意な能力など、せいぜい90度である。加えて、最近は金融と工学が一緒になったり、医学とバイオテクノロジーが結びついたりして、新しい知識分野がどんどん生まれている。それを全部自分一人で網羅できるとは私は思っていない。