もはや「英語」は韓国人の必須教養

米国国際教育研究所(Institute of International Education)の集計によると、2019年にアメリカの大学に通う韓国人留学生数は約5万2000人で、人口が韓国の約28倍以上の中国(約37万人)、インド(約20万2000人)に次ぐ大きな規模になっています。同年の日本人留学生数は約1万8000人で韓国人の約3分の1です。韓国の人口が日本の半分以下であることを考えると、韓国人の留学熱の高さがうかがえます。

船津徹『失敗に負けない「強い心」が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方 』(KADOKAWA)
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留学熱が高いとは言え、海外留学を実現できるのはごく一部の裕福層です。多くの子どもは韓国に住みながら、英語学院と呼ばれる英語塾に通ったり、オンラインレッスンを受けたりと、努力を重ねて英語を身につけます。韓国では英語を身につけられなければ「負け組」決定ですから、子どもも必死なのです。

韓国の英語学院(英語塾)は、日本の学習塾のように週1~2回、1時間の英語レッスンを受けるというなまやさしいものではありません。学校が終わってから週に3~5日塾に通い、3~6時間、ネイティブ講師から英語レッスンをみっちり受けるのです。塾が終わる夜10時頃になると、英語学院がひしめき合うソウルの一角は子どもを迎える車の列で渋滞が起きるそうです。

社会問題化する競争による「燃えつき」

英語学院の指導レベルは高く、授業はすべてネイティブ講師が英語オンリーで行うのが原則だと言います。小学生の子どもが、欧米の大学受験のための「TOEFL対策」をするのは当たり前。さらに小学生から『ハリー・ポッター』などの小説やエッセイを「原書で読んで」内容を発表したり、英語でディベートしたりといったハイレベルな授業を行っているというから驚きです。

本当に韓国ではそれほどハイレベルな英語教育が行われているのだろうか? 疑問に思い、韓国の有名英語学院で指導経験があるネイティブ講師から話を聞いてみたことがあります。その人によると、英語学院では、英語圏に留学することを前提に、英語で教科指導(数学、理科、社会)をしたり、アメリカの大学進学を目指す生徒向けにSAT(アメリカの大学適性試験)対策やエッセイ指導をしたりと、インターナショナルスクール顔負けの難易度が高い授業を行っているとのことでした。

最近は有名塾(英語学院)の人気が過熱し、入塾試験をパスするための塾が登場するなど、度を越えた「競争」が韓国の若者たちを疲弊させ、燃えつきさせてしまう(Burn out)ことが社会問題になっています。