祇園祭、五山の送り火……。京都で大規模な祭りが規模縮小や中止に追い込まれている。だが、「けがの功名」という面もある。京都在住のジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「平時であれば京都に赴き、祇園祭に参加して入手するしかない厄除けの『ちまき(粽)』が特別にネット販売されている。こんなチャンスは二度とないかもしれない」という——。

「コンチキチン」京都の祇園祭は事実上の中止だが、特別に……

いま、全国の神社では「の輪くぐり(夏越の祓)」の神事が実施されている。

茅の輪くぐり(京都市・平野神社で)
撮影=鵜飼秀徳
茅の輪くぐり(京都市・平野神社で)

茅の輪くぐりとは、鳥居などにかやで作られた大きな輪を設置し、そこをくぐって無病息災などを祈る儀式だ。上半期の厄を落とし、心身を新たにして下半期を迎える意味がある。

私も先日、京都市内の神社に赴いて、茅の輪くぐりをしてきた。コロナ禍だからこそ、こうした宗教儀式は尊いのだ。

このように、“祭りの街”京都では「小さい祭り」であれば、例年並みに実施されるケースがあるが、大規模な祭事は規模縮小か中止に追い込まれている。

本来ならばちょうど今頃は、「コンチキチン」の音色が涼しげな祇園祭の真っ最中のはず。ところが今年は山鉾やまほこの組み立ておよび巡行の断念など、事実上の中止に追い込まれている(関係者による神事のみ実施)。

京都でしか手に入らない厄除けの「ちまき(粽)」をネットで購入可

しかしながら、ネガティブなことだけではない。

祇園祭で授与される厄除けの「ちまき(粽)」(食べ物ではない)がインターネット経由で販売されるなど、新サービスが生まれている。祇園祭のちまきの語源は、冒頭述べた「茅の輪」の「茅」を、輪っかにせずに「巻いた」バージョンで、ご利益は同じである。「茅巻(ちま)き」は後世、食べ物の「粽」に語彙変化した。

現在、「長刀鉾」や「白楽天山」のちまきが1束1000円で通販されている(転売禁止)。平時であれば京都に赴き、祇園祭に参加して入手するしかない。なので、遠隔地にいながら厄除けちまきを手入れられるとあって、人気を博しているという。こんなチャンスは二度とないかもしれないので、求めたい人は公式サイト上からアクセスしてもらいたい。

祇園祭のちまき。京都ではよく民家の玄関に掛けられている。
撮影=鵜飼秀徳
祇園祭のちまき。京都ではよく民家の玄関に掛けられている。

厄除けちまきは京都人の多くが買い求め、1年間、玄関の上部に飾って疫病の退散などを願うのが習慣である。京都以外の全国で、この宗教習慣が広がって祇園祭の認知度が上がるのであれば、それはそれで悪いことではなさそうだ。祇園祭の詳細は4月25日の本コラム「京都人が『祇園祭だけは、やめるわけにはいきまへんやろ』と話す深いワケ」をご覧いただきたい。