この場合、夫は妻側に「婚姻費用」を支払うべき法律上の義務がある。任意で渡してくれないようであれば、家裁に調停を申し立てることができる。支払義務者(夫)が拒否しても、裁判所が「いくら払うように」と決めてくれる。支払われない場合には、給与の差し押さえができる。

男性側が婚姻費用を下げることも可能

むろん、法律は女性だけのものではない。男性にとっても知っておくと便利なシーンが多々ある。例えばこの事例で、次のような状況になった場合、男性読者諸氏はどうすればいいと考えるだろうか?

「妻子と別居して、毎月婚姻費用を支払っている。妻はそれに味を占めて、自分はたまにアルバイトする程度しか働かず、婚姻費用をもらい続けるつもりのようだ。婚姻費用はいつまで払わなければならないのか? また、金額は今後どうなる?」

婚姻費用は、離婚が成立するか別居を解消するまで支払う必要がある。金額も、調停や審判で決められた場合は、一方的に変えることはできない。

つまり、別居が続く限り、離婚するまで延々と婚姻費用を支払い続けなければならないということだ。当初、離婚に難色を示していた夫が、妻子と別居してほとんど会うこともできないのに、毎月婚姻費用を支払うことに嫌気がさして、離婚に踏み切る場合も少なくない。

しかし、この夫の給与が大幅に下がったり、病気で働けなくなったりなどした場合や、もらう側(妻)が仕事を始めて収入が大幅に増えた場合、「婚姻費用減額」を求める調停を起こすことができる。

なお、調停や審判になった場合、妻が全く仕事をしていなくても、特段の事情がない限り、月に10万円程度は稼げるとみなされ、年収100万~120万くらいの稼働能力を前提として金額を決められることが多い。

あなたや大切な人を守るために知っておこう

「もしもの時に自分を守る方法がある。それを知っているだけで変わることは少なくない」と、『おとめ六法』(KADOKAWA)を上梓した上谷氏は話す。

上谷さくら『おとめ六法』(KADOKAWA)
上谷さくら、岸本学『おとめ六法』(KADOKAWA)

冒頭の例に戻ると、性被害の場合、被害者の体に加害者の手がかりが残っていることが多いため、シャワーを浴びたり、被害時に着ていた衣類を捨てたりしないことが重要だ。すぐにそのまま警察に駆け込めば、体液などを採取できる可能性がある。

法律を知っていても、その後に何をすればいいのかを知らなければ、結局、犯罪として立件できなくなる恐れが十分にある。実際、「強制性交等罪」「準強制性交等罪」は、証拠不足のために立件できないケースがとても多い。

法律とそれに伴う手続きの知識は、いざというときにあなたを守るだけでなく、もし家族や友人がそのような目に遭ってしまったときには、助けることもできる。

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