流動性が懸念される時代に金の重要性は際立つ
金市場は規模が小さく、取引がしづらいと思われがちだが、実際には日本株やNYダウ平均株価よりも流動性が高いとされている。2019年の金の売買高は、日次平均で約16兆円もあり、深刻な金融ストレスの状況下でも金の流動性は枯渇しないことがわかっている。
コロナ危機が発生した2020年3月に株価が急落し、ヘッジファンドや機関投資家が顧客からの解約または追加証拠金(追証)などの要請に応じるため保有資産の売却に動いたときにも、金市場はまったく混乱なく多くの取引を吸収した。市場の厚みは十分証明されている。
すなわち、金融市場の流動性が懸念される事態になったときほど、金の重要性が際立つのである。
一般的に資産運用は、株式と債券が主たる対象になることが多かった。だが、これまで述べてきたように時代は大きく変わりつつある。今後は株式リターンが低下し、金のリターンがそれを上回る時代になる。個人としては資産ポートフォリオの見直しが必須である。
※本稿は、江守哲『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。