明らかに鈍化し始めた米国の経済成長率
今後も米国が成長するかは誰にもわからない。ひとつ言えることは、経済成長率は明らかに鈍化しているということである。
また、米国株のリターンそのものも低下してきている。1920年代以降のS&P500の投資リターンを見ると、1920年代以降で20年間保有した場合の年率の平均リターンは11.0%だった。しかし、直近20年の年率の平均リターンは5.6%に低下している。
世界の株価指数で最も大きく上げているといわれる米国でさえ、1年間のリターンはいまや5.6%でしかないのである。シーゲル氏が指摘する、過去217年間での平均リターンである6.7%と比較しても明らかに低下してきている。
米国株のリターンも低下が続く
現在では、米国の主力企業で構成されるS&P500に投資をしても、以前ほどには収益を得るのが難しくなってきている。
これは、米国の潜在成長率が以前の3.5%から現在の2.0%に低下していることが背景にある。世界的投資家であるウォーレン・バフェット氏は、「個別銘柄への投資がわからなければ、S&P500に投資すればよい」と言っているが、私たちは徐々にリターンが低下しているという事実に目を向けておく必要がある。
シーゲル氏は、米国も高齢化しているものの、インドなどの途上国の成長が今後の米国の成長を助けるとしている。私も以前から、インドが今後最も大きく成長し得る新興国であり、投資先として選別すべきとしてきた。はたしてそれでリターンの低下を補えるかは、しっかり追っていく必要がある。
リターンの下落をカバーする「金」
新型コロナウイルスによって停滞した世界経済を支えるため、各国の政府・中央銀行が大量の資金供給を行ったことで市場にマネーが溢れ、今後、通貨の価値は下落する一方になるだろう。
債務不履行(デフォルト)は政府・中銀が肩代わりすることで回避される可能性があるものの、その結果、通貨の価値はさらに大きく棄損するだろう。ドルの基軸通貨としての価値が低下し、これまでとはまったく異なる枠組みが構築されていく。
世界情勢が大きく変化していくに従い、今後の資産運用はこれまで通り株式を中心としながらも、低金利でリターンの減った債券の役割は徐々に「金」に置き換えられていくと考えられる。