近年の金のパフォーマンスは良好

さて、投資家はこれから金に何を求めるだろうか。

まずは安全資産としての機能だ。突然の世界情勢の変化などで株式市場が大きく下落するようなときに、資金の逃避先としての機能に期待するだろう。コロナ危機においても、金価格は原稿執筆時点で年初から15%上昇し、大きく値を下げたリスク資産である株式や原油などと比較しても、圧倒的に高いパフォーマンスを示している。

金に関する国際調査機関のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が公表した「戦略的資産としての金の重要性」というレポートでは、過去の金融危機時における主要資産と金のパフォーマンスを比較している。1987年のブラックマンデー、1998年のロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)破綻(債券運用での失敗)、2001年9月11日の米同時多発テロ、2002年の世界経済の失速、2008年のリーマン・ショック、2009年以降の欧州債務危機、2018年の景気減速などが比較対象となっている。

2019年末までのデータを検証したところ、通常の景気拡大期と景気後退期では、金と世界株式の相関係数は「-0.05」および「+0.1」、日本株の代表的な指数である東証株価指数(TOPIX)とは「-0.01」および「+0.1」、世界の債券とはそれぞれ「+0.05」および「+0.2」、日本国債とは「-0.25」および「+0.02」となっている。

つまり、景気がよくても悪くても、金は他の資産とほとんど相関がなく、値動きが異なるということである。これは、株式と金を同時に保有していても、その価格が同じようには動かないことを示している。

金投資のリターンは?

では、「金投資のリターン」はどうだろう。

金は金利が付かず、配当もないため、保有しているだけではリターンもキャッシュフローも生まない、との指摘がよく聞かれる。しかし、過去20年の金の平均年間リターンは10%程度であり、実際には株式や債券よりも高いリターンが得られている。過去10年および過去5年でも、それぞれ6%および3.5%と堅調である。

前出のシーゲル氏は長期間の株式・債券・金のリターンを調べているが、直近ではむしろ株式のリターンは低下しており、金が高くなっている。これらの数値でも確認できるが、金を保有すれば投資分散効果が得られるのである。

たとえば私たち日本人が円で運用した場合、金を資産の4.13%程度保有すれば、運用パフォーマンスが向上することがわかっている。つまり、金を長期の資産運用に加えたほうがよい、ということである。