日本は独自で真相究明を進めるべきだ

【手嶋】トゥー博士は、生物・化学兵器の専門家として国防総省の顧問を長く務めており、より詳細な分析をアメリカ政府に伝えていると思います。武漢病毒研究所には「P4」といわれる最高レベルの危険なウイルスの研究実験施設を備え、中国のウイルス研究の中枢を担っています。それだけに、アメリカの疾病対策センター(CDC)が専門家を派遣したいと申し入れたのに対して中国側は受け入れを拒否し、代わって中国人民解放軍の生物化学兵器の最高の専門家と見られる女性の少将を武漢に派遣した事実からも「いぶかしい」と述べています。

手嶋龍一、佐藤優『公安調査庁-情報コミュニティーの新たな地殻変動』(中央公論新社)
手嶋龍一、佐藤優『公安調査庁 情報コミュニティーの新たな地殻変動』(中央公論新社)

【佐藤】米中両超大国は、コロナ禍を巡る情報戦を繰り広げていますが、日本も多くの感染症の専門家を擁し、日中間でも限界があるとはいえ学術交流も盛んなのですから、真相の究明を欧米任せにせず、独自に取り組むべきだと思います。それによって、中国が初期の段階で情報を公開し、国際間の協力体制を取っていれば、今回のパンデミックを初動の段階で抑えられた可能性があったことを明らかにしておくべきだと思います。

【手嶋】コロナ禍は、当初、武漢の食料市場からコウモリを介してヒトに感染したと伝えられましたが、武漢病毒研究所から漏れたことが確認されれば、ウイルスの管理や研究体制の見直しを抜本的に迫られることになると思います。

コロナ後の世界は、大きく変わる

【佐藤】世界的なベストセラー『サピエンス全史』の著者で、イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリは、今回のコロナ禍に関して深い洞察をわれわれに示してくれています。

選択を下す際には、目の前の脅威をどう乗り越えるかだけでなく、この嵐が去ればどんな世界に住むことになるかも自問すべきだ。新型コロナの嵐はやがて去り、人類は存続し、私たちの大部分もなお生きているだろう。だが、私たちはこれまでとは違う世界に暮らすことになる。(『日本経済新聞』電子版、2020年3月30日)

これを機会に教育の世界にも重要な変革の波が押し寄せていくでしょう。日本の学校の始業を欧米やロシアの基準に合わせて9月にすべきだという議論はその最たるものだと思います。東京大学がすでに9月始業を検討しながら、反対意見が根強く断念した経緯がありました。私は、児童、学生の海外留学が容易になるという観点から学校を9月始業にする案は、十分に検討に値すると考えています。同時に、日本のインテリジェンス機関が、パンデミックを主要なテーマに据えて、自己改革を進める好機だと考えています。

【手嶋】おおいに賛成です。公安調査庁がその先導役を担ってほしいと思います。

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