「バスチー」「マチノパン」の成功体験が背景

——そもそもなぜPBのデザインを大きく変えることになったのでしょうか。

ローソン 竹増貞信社長(画像提供=ローソン)
ローソン 竹増貞信社長(画像提供=ローソン)

順を追ってご説明できればと思います。2016年にローソンの社長となってから、私は「コンビニ」ではなく「ローソン」として選ばれたいと店づくりを進めてきました。その結果のひとつが2019年3月に発売した「バスチー」(税込215円)です。

2018年秋、私は「自由な発想で作るデザートチーム」を立ち上げました。これは、自分たちが食べたいもの、大切な人に食べてほしいもの、かつローソンにしかできないものを、自由な発想で作るのが目的です。バスチーはそこから生まれたのです。

当時コンビニスイーツは「200円を超えると売れない」と言われ、周囲からも大反対されました。しかし、価格でこの企画をボツにしてしまっては、「自由な発想」が出てこなくなってしまいます。私たちの狙いは、コンビニという枠を超えて「ローソンのあれがほしい」と言われる商品を出すこと。そう考えて発売したところ、3日で100万個を売り上げ、他社さんも追随してくださる人気商品になりました。

また2019年の3月に発売した「マチノパン」では、「脱・コンビニ袋パン」を目指しました。フランス産小麦の小麦粉を使用したフランスパンに、「グラスフェッドバター」をサンドするなど、素材や製法にこだわり、食感と具材のおいしさを追求したシリーズです。おかげさまで好評となり、前年比100%を切っていたベーカリーカテゴリーの売上は、100%超に回復しました。

これらの経験から、「コンビニらしさ」という枠から出て、自由な発想で商品をつくることに手応えを得ていました。そこで、2019年9月、佐藤オオキさんが率いるデザイン会社「nendo」にPBデザインの全面リニューアルをお願いしたのです。

「コンビニのパッケージ」にとらわれないデザイン

——具体的にはどのような狙いがあったのですか。

私たちが目指すPBは、振り向けばそこにあるようなPB、いつも生活を一緒に過ごせるようなPBです。そのため、これまでの「ローソンセレクト」を「L basic(エル・ベーシック)」と「L marche(エル・マルシェ)」の2つのブランドに分けました。

さらに佐藤オオキさんと検討を進めるなかで、「買ってきた後に、家やオフィスにしっくりなじむ」というアイデアをいただきました。その発想は今までの僕らにはなかったものでした。牛乳やお茶など、常にストックしているものは、すでに選んで買ってきているのだから、主張の強いデザインである必要はない。「ぜひ一回やってみよう」となりました。

——一部のPBのデザインを変えるということですか。

いいえ。当初から、すべてのPB商品を刷新する計画でした。中途半端に始めると、その後の方向性について、判断しづらくなるため、大きく振り切ったのです。どんどん世の中に出して、お客様の声を羅針盤にしながら方向を修正していこうと考えました。昨年秋以降、在庫の切れた商品から徐々に入れ替えを進めています。

初期に刷新した商品で、大きな手応えを感じたのが「第三のビール」です。うちの商品名は「ゴールドマスター」。よく売れていた商品です。それがデザインを変えたところ、さらに売上が伸びたのです。お客さまからは「コンビニじゃないみたい」「クラフトビールみたい」といわれました。デザート、ベーカリーに続いて、第三のビールでも「コンビニらしくない」ことが評価されたことで、間口は広げられるのだと感じました。

ゴールドマスター(350ml)の旧パッケージ(左)と新パッケージ(右)
画像提供=ローソン
ゴールドマスター(350ml)の旧パッケージ(左)と新パッケージ(右)