もう1つ興味深いのが、生の果物とは違って、果物を加工したフルーツジュースを飲んでいる場合には、糖尿病のリスクが、かえって上昇してしまうという事実。1週間当たり3単位(コップ3杯分)のジュースを飲んでいた人は、糖尿病になるリスクが8%高かったのです。15年に発表された観察研究のメタアナリシスでも、フルーツジュースの1日当たりの摂取量が1単位増えると、糖尿病のリスクも7%アップすると報告されています。このように、野菜ジュースの場合と違って(野菜編を参照)、フルーツジュースには、「体に悪い」というエビデンスが示されているので、健康のためには、飲むのは控えたほうがいいでしょう。

生の果物
PIXTA=写真

ところで、ご存じのように、甘い果物には、果糖がたくさん含まれています。「フルーツジュースなら、血糖値が上がるのはわかるが、なぜ生の果物なら、糖尿病の予防に役立つのだろう?」と、不思議に思った人もいるかもしれません。確かに、生の果物を食べると、果糖を摂取することになるのですが、果物に含まれるその他の成分や栄養素も、一緒に摂れるわけです。例えば、生の果物には、血糖値の上昇を抑制する効果のある「不溶性食物繊維」も、豊富に含まれています。それに対して、フルーツジュースは、加工の過程で、大事な不溶性食物繊維が取り除かれてしまいます。

そうした結果、果糖ばかりを大量に摂取することになり、血糖値が上昇しやすくなるのではないかと考えられるのです。「それなら、フルーツジュースと一緒に、不溶性食物繊維のサプリメントも摂ればいいや」と、考える人もいるかもしれませんが、生の果物には、血糖値を下げるファクターが、ほかにもあるのかもしれません。フルーツゼリー、フルーツジャムといったように、果物を使った加工食品には、さまざまな種類があるものの、生の果物と同じような健康効果を得られるというエビデンスはありません。健康上のメリットを追求するなら、加工食品ではなく、生の果物を食べるべきでしょう。

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健康に良い炭水化物

血糖値のコントロールやダイエットの目的で、炭水化物を減らした「糖質制限食」が人気を集めていることは、皆さんもご存じでしょう。健康志向の日本では、炭水化物は今やすっかり悪者扱いですが、そうした風潮に、私は大いに異論があります。というのも、総論で説明したように、確かに「健康に悪い炭水化物」もありますが、一方で、積極的に摂ってもいい「健康に良い炭水化物」もあるからです。