「外出・営業の自粛と感染拡大には相関が少ない」

しかし、スウェーデン方式を全否定するのはやや早計に思われる。すでに述べたように、医療崩壊を防ぐという第一の目標は達成されているし、テグネル氏も「高齢者施設などでは、よりよい方法があったかもしれないが、感染防止の戦略はおおむねうまく機能した」「次に大きな感染が起きても同じような対策を実施するつもり」とコメントしている。詳しくは触れないが胃ろうを嫌い寝たきり老人が皆無という福祉国家独特の死生観・個人主義もあってか、国全体を揺るがすような大きな不協和音は聞こえてこない。

加えて、「ロックダウンはムダだった」論は、パンデミックの早い段階でスウェーデンのみならず随所から上がっている(過去記事『緊急事態宣言「全く不要だった可能性」の指摘も』参照)。日本国内でも、6月11日の大阪府の「新型コロナウイルス対策専門家会議」で、大阪大学核物理学センター長の中野貴志教授が、「データを見る限りでは、(外出・営業の自粛と感染拡大との間には)相関が少ない」と明言するなど、ここ数カ月で蓄積されたデータの分析によって徐々に説得力を持ち始めている。

感染の拡大そのものを食い止めるという、ロックダウンや緊急事態宣言の発想じたいが有効でないとしたら、第2波への備えとしてのスウェーデン方式は、日本にとっても十分に検討に値するのではないか。無論、感染者は増えるし、それゆえに他の国の入国禁止措置などが経済活動に及ぼすマイナスも考慮せねばなるまい。

「簡単に死なない」日本人の強み

しかし、反省点はすでに明確だ。死亡した感染者が集中する70代、80代以上の高齢者および基礎疾患を持つリスクグループへのケアが足りていなかったことである。彼らの隔離も含めて、そのケアに様々なリソースを集中配分できぬものか。「ベストを尽くしても難しい」というテグネル氏の反省を重々踏まえつつ、である。

そもそも老人介護施設や医療施設で働く人々は、ロックダウンや緊急事態宣言の下でも自粛とは無関係に現場に赴かなければならない。現地在住の日本人によれば、スウェーデンではそうした施設で働く人々はただでさえ賃金が低いのに、病気などで仕事を休むとその初日は無給、その後も何日分かを割り引かれてしまう。そのために無理をして出勤したことが感染を拡大させてしまったという(前出・吉澤氏、Youtubeより)。

日本の場合、スウェーデン方式の最大のネックである死亡率が(理由は不明だが)欧米諸国に比べて圧倒的に低いことと、感染者の9割を超える退院・療養解除率――誤解とお叱りを覚悟でいえば、「簡単には死なない」という強みがある。ウイルスによほどの変異がない限り、経済活動を損なわずに第2波と対峙するよりよい方法だといえるのではないか。

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