6つの方針を軸に、台湾的「ウィズコロナ」生活

そして2020年6月7日、海外渡航歴がある人を除いた新規の感染者ゼロの状態が8週間(潜伏期間14日の4回分に相当)続いたことから、各種制限が大幅に緩和された。これまで義務付けられていた公共交通機関でのマスク着用義務を乗客同士の距離が保たれていることを条件に解除、イベント開催において「実名制」、もしくは「実聯制(感染者が出た場合、その場にいた人に連絡がつくようにすること)」をとり、かつ手洗いやソーシャルディスタンスの確保が行われている場合、入場制限を撤廃するなどだ。

そして6月10日には、卓球の元日本代表・福原愛さんの夫で卓球選手の江宏傑さんをPR大使に迎え、改めて「防疫新生活運動」を提唱した。台湾的ウィズコロナだ。感染拡大防止に努めながら日常生活を送るために、PRポスターでは次の6つの方針が掲げられている。

・マスク着用の習慣化
・石鹸での手洗いの励行
・ソーシャルディスタンスの確保(屋内1.5メートル、屋外1メートル)
・外出の際は混雑しない時間帯を調べてから出かける
・屋内に入る際の検温に協力する
・飲食店のテーブルには飛沫防止パーテーションを設置

方針を見ると日本の厚生労働省が掲げる「新しい生活様式」と比較してそれほど変わった点はない。台湾では具体的にどのような「ウィズコロナ」の生活が送られているのだろうか?

「仕事も生活も、もう平常運転です」と話すのは、台湾のシリコンバレーと呼ばれる新竹市の会社員・陳さんだ。「コロナの前と変わったことと言えば、出勤時にマスクをつけ、会社の建物に入るときに検温と手洗いをするようになったこと。そして取引先への訪問が禁止となり、会議は社内のものも社外のものも全てSkypeになったことですね」という。

それらの変化も踏まえたうえで「平常運転」。ビフォーコロナの頃になかった習慣が、すでに日常に組み込まれているのだ。感染拡大防止に努めながらの日常に、ストレスや不便を感じることはなかったのだろうか。

陳さんは「会社は感染拡大防止のために奔走してくれたと思います」、そして「台湾での感染者のほとんどが国外で感染して帰って来た人たちです。彼らが14日の隔離措置をしっかり守ってくれたおかげで台湾の感染者は少なく抑えられたのだと思います。マスクをつけなければいけないのは不便ではありますが、これくらい大丈夫です」と話してくれた。