検温や書類にサイン…面倒な手続きにも協力的な台湾市民

台中市の会社員・呉さんも同様に話す。ただ呉さんの勤める会社は営業での企業回りを禁じてはいなかった。しかし会社訪問時に先方のオフィスには入れず、入口前に設けられたテーブルで商談を行うことがあったという。

どうしても先方のオフィスに入る必要があるときは、直近に海外渡航歴がないことや、健康状態を申告する「声明書」にサインしてはじめて屋内に入ることができるのだそう。もちろん検温も必要である。まるで入国時の検疫だ。日本で同様のことが求められたら、トラブルが起きそうなものである。

呉さんに拒否もしくは嫌がる人がいなかったか聞いてみたところ、「みんな協力的ですよ。確かに厳しいかもしれませんが、そこまでして初めて新型コロナウイルスを封じ込められるのだと思いますよ」とのことだった。生活で変わったことと言えば、マスクや手洗い以外だと、レジャー面で繁華街に遊びに行く人が減り、山登りなど郊外でのアクティビティがはやっていることが挙げられるそうだ。

「日本で『コロナ疲れ』が出るのはわかります。新型コロナウイルスはわからないことだらけで、疑心暗鬼になるのは無理のないことです」と言うのは日本での就労経験がある台北市在住の黄さんだ。そして台湾でコロナ疲れがなく、スムーズに新しい生活様式に入ったことについてこう話す。「台湾は、早い段階で海外からのウイルス侵入を防ぐことを重視していて、それが功を奏したことが大きかったと思います。そして中央感染症指揮センターからこまめな情報提供があったことで安心感がありました」

ユーモア交えた呼びかけに「台湾の政治家はイケてる!」の声

中央感染症指揮センターからの情報提供の仕方も好感が持てるものだったそうだ。

「よく覚えているのは、14日間の隔離対象者に対し『逃亡を防ぐために電子手錠をつけないのか』と質問が出たとき陳・衛生福利部長が「人は肉の塊ではない」とし、周りが思いやりを持つことで隔離者が安心して家にいられることを訴えたことです。また、ピンクのマスクをつけていた男の子がからかわれたという話があがると、陳部長ら幹部がピンク色のマスクをつけて会見に臨んだことも印象に残っています。『ピンクパンサーが好きだった、ピンクはいい色』と言って話題になり、Facebookはピンクパンサーやピンク色のマスクの投稿でいっぱいになりました。

政治家たちがFacebookで、たとえば自身をマスコットキャラみたいになってユーモアを交えて情報を発信してくれたのも良かったです。たとえばトイレットペーパーの買い占めが起きたときに行政院長(首相)がおしりを振ったイラストつきで『私たちのお尻はひとつだけ』と、必要以上のトイレットペーパーを購入をしないよう呼び掛けたりすることもありました。面白くてついシェアしてしまいますよね」