日韓関係が「悪い」との回答は日本で84%
エスカレートした対立を反映するように両国の国民感情は冷え込んでいる。読売新聞社と韓国日報社が5月22~24日に実施した共同世論調査によれば、現在の日韓関係が「悪い」との回答は日本で84%に上り、1995年の調査開始以来3番目に高い。韓国では「悪い」が91%と過去最悪だ。右手で「握手」を求め、左手で「拳」を握る外交姿勢をとり続ければ、このような結果を招くのは当然ともいえる。
「こうした動きは想定内といえば想定内だが、あまりにも国内の事情で反日カードを切っているのが見え見えだ」。経済産業省幹部はこう嘲笑する。新型コロナウイルス対策で迅速なPCR検査やIT技術による追跡を実施するなど世界の関心を集めた文在寅大統領は、4月の総選挙で政権与党が歴史的圧勝を収めたことで気をよくしていたのだろう。コロナ禍で傷ついた国内景気への不安や不満が文政権に向かうタイミングと合わせるように「外敵=日本」を再びつくり出し、国民の反日感情を利用しようとの思惑も感じる。大統領の任期である5年に一度、壮大な「ガチャ」が訪れる韓国では、多くの大統領が退任後に逮捕されるなど悲惨な結末を迎えている。そうした特殊な環境下で「反日カード」を切らざるを得ない事情はもはや哀れというしかない。
文大統領は「因果応報」という言葉を知らないのか
残念ながら、文大統領は「因果応報」という言葉を知らないのかもしれない。2月には1日1000人近い感染者が確認されていたものの、「K防疫」と呼ぶ新型コロナウイルス対策で4月末には1日の感染者数をゼロにした韓国。文大統領は「われわれの防疫モデルは国際社会の評価も高く、『K防疫』が世界の標準になっている」と自信満々に宣言してみせたものの、防疫レベルを緩和した5月上旬には、ソウルのナイトクラブや物流センターで集団感染が相次ぎ、抑え込みの効果には懐疑的な見方も広がる。
さらに文大統領を待ち構えていたのは「統一」まで志向してきた北朝鮮との関係崩壊だ。2018年4月に板門店で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と首脳会談を行い、同年9月には平壌まで訪問して友好ムードを演出してきたが、今年6月からは金委員長の実妹の与正第1副部長の逆鱗に触れて緊張状態に突入している。きっかけは韓国の脱北者団体による金体制批判のビラ散布とされるが、与正氏は6月4日の談話で「相応の措置をとらないならば十分に覚悟すべきだ」と警告し、開城(ケソン)工業団地内の南北共同連絡事務所を爆破し、南北軍事境界線付近への軍進出をみせている。文大統領は慌てて特使派遣を提案したが与正氏に拒否され、「事態の責任まで転嫁しようとするのは図々しい」とまで批判される始末だ。