大きな商談を取るなら、それ相応の接待も必要となるだろう。一案件あたりの提案金額や立場の違いから、2000万円稼ぐ人と、500万円台の人の接待の違いは際立つ。
500万円台の人の接待はカジュアルなものが多く、「自分の行きつけ」(プレゼン格差23)の「和食の店」(プレゼン格差24)で、メニューは「相手の希望を想定して事前予約」もしくは「当日話しながら決める」(プレゼン格差25)。「店の予約以外、特に事前準備は何も」せず(プレゼン格差26)、二次会については「当日の一次会後」に伝え(プレゼン格差28)、二次会は「カラオケ・スナック」や「バー・居酒屋」(プレゼン格差29)という姿が垣間見える。
一方、2000万円を稼ぐ人の接待は、気合、相手に対する気配りにも並々ならないものを感じる。
まず店の選択から凝っている。「超有名店」を選ぶ500万円台の人が、5.7%であるのに対して、2000万円稼ぐ人は15.5%(プレゼン格差23)。これは私も外さないようにしている。なぜ「超有名店」なのかといえば、味ではない。「あのとき、あの店に行きましたよね」と、それ自体が以降の話題となるからである。
店の選択や「注文」で2000万円稼ぐ人は「相手の希望を想定して事前予約する」が42.5%と最も多い(プレゼン格差25)が、私自身はといえば、31.0%が支持する「必ず相手の要望を聞いて事前予約」派である。
「和洋中では何がお好きですか」に始まり、相手がアレルギーを持っていたり好き嫌いがあったりするといけないので、「苦手な食べ物はないですか」と事前に尋ねておく。
接待も上着の着用と同様、形が大事。相手が「こんな超有名店に招待してくれたんだ」と喜んで、以降ずっと覚えていてくれそうな、誰もが知っているような高級店を選ぶ。覚えていてもらうことが大切なので、高そうに見えないのに実際は高い店や隠れた名店を選ぶことはない。
料理の種類としては、私は中華料理かイタリアンを選ぶことが多い。中華の大皿料理、イタリアンの前菜・ピッツァ・パスタなど取り分けができる料理は、「同じ釜の飯を食う」という一体感が感じられるので接待には向いている。
店の予約以外、2000万円稼ぐ人の8割超が、事前にリハーサルや相手の趣味を調べるなど、準備を行っている(プレゼン格差26)。私も重要な接待の前にはランチに行って雰囲気を確かめ、個室を見せてもらうこともある。
店のアレンジ以外にも、当日の話題収集のために相手企業のことも調べる。知人で読書家のコンサルタントは、相手が興味を示しそうな本を持っていって「最近読んでおもしろかったんです。きっとお好きだと思って」と渡すそうだ。もらった側は自分の興味のある分野で、かつ「彼がいいと言っている」ならと喜んで受け取るという。本に限らず、スポーツや音楽などの趣味が合うだけでも、「ビジネス上でも話が合うかもしれない」と思わせられる強力な要因となる。
私が思うに、接待とは「仕事上のつき合いの根底にある人間同士のつき合い」を深めるためにある。従って接待に最適なタイミングとは、ある程度仕事をして、お互いの仕事の進め方がわかり、もう一歩踏み込んで深く相手のことを知りたいときだ。初対面に近い状態では、仕事上の信頼関係ができていないため、接待の効果は期待できない。