「愛知県民にとって恥ずかしいことをする知事」

昭和天皇の肖像を使った創作物を燃やす作品などの展示を認めた芸術祭の実行委員会会長・大村知事に対し、吉村知事が「知事として不適格。責任をとらないといけない」と痛烈に批判。これに大村氏が「憲法21条の『表現の自由』を全く理解していないのではないか。日本維新の会は表現の自由はどうでも良いと思っているのではないか」と反論し、記者会見やツイッター上などで激しい戦いが繰り広げられてきた。

こうした攻防はコロナ危機到来で収まったかに見えたが、吉村氏を応援している美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長は6月2日、名古屋市のホテルで開いた記者会見で「昭和天皇の写真に火をつけたり、英霊を辱めるような作品が公開された」「国にとって恥ずかしい、愛知県民にとって恥ずかしいことをする知事は支持できない。県民に現実を知っていただいて、改めて判断を仰ぎたい」などと、大村知事のリコール運動を始めると発表。保守層に影響力を持つ作家の百田尚樹氏、明治天皇の玄孫で評論家の竹田恒泰氏らも同席した。

国政では中途半端な維新

参加を呼び掛けられていた吉村氏は欠席したが、同日のツイッターでは「リコールは簡単にはいかないと思いますが、応援してます、なう。行政が税金であの『表現の不自由展』はさすがにおかしいですよね」と参戦した。

緊急事態宣言の解除後、ヒートアップしている「大阪府VS愛知県」のトップ対決の背景には何があるのか。全国紙政治部記者はこのように見る。「あいちトリエンナーレの企画展には保守層から猛反発があり、それが根本にあるのは間違いない。しかし、吉村氏はその他のこともいろいろと計算しているのではないか。その1つには、自身の人気があるうちに『維新』を全国区にしようという思惑があるはずだ」。

コロナ対応をめぐる各種世論調査で、吉村氏は東京都の小池百合子都知事とともに人気が上昇した首長だ。連日のようにテレビに露出し、評論家やコメンテーターが無批判のまま絶賛する今は「吉村バブル」ともいわれている。スポーツ紙や週刊誌でも好意的に持ち上げる記事が溢れているが、その一方で、国会で少数政党に甘んじている日本維新の会は野党なのか、与党寄りなのか分からない中途半端さも影響し、その党勢は思うような広がりを見せてはいない。