会社が求めるのは使い捨ての「モー娘。」

低賃金で働き、勤め先の都合で突然、解雇される。派遣やパートなど非正規雇用は企業にとって、人材育成のコストがかからず人件費を低く抑えられ、利潤を生む労働力として都合がいい。今や、全雇用労働者の3分の1、約1700万人が非正社員だ。

「私たちは使い捨てです」

添乗員歴14年。大手旅行社「阪急交通社」の子会社「阪急トラベルサポート」(いずれも本社・大阪市北区)に所属している、大島由紀さんは話す。

旅行好きだった大島さんが旅行関係の仕事に就いたのは、大学を卒業した22歳のとき。受付などの内勤としていくつかの旅行会社を転々としながら、海外を飛び回る添乗員の仕事に憧れ、30歳のときに求人誌で見つけた旅行関係の人材派遣会社に登録。99年に今の会社に移り、ヨーロッパを中心に添乗の仕事をしている。

目下、全国に1万人近くいる添乗員の約9割が派遣だ。80年代、旅行各社は人件費削減のため子会社として添乗員派遣会社を相次いで設立。バブル崩壊後の不況や、01年の米同時テロ後の旅行需要の冷え込みを背景に、格安ツアーや日帰りツアーが急増したことから、派遣添乗員への切り替えが一気に進んだ。

そもそも「旅程管理者」の資格を持つ添乗員は、顧客が快適・安全に旅行できるようサポートするのが本来の仕事だ。ところが、大島さんによればそれ以外の“業務”を次々と押し付けられるという。

旅行代金を安く抑えるためにガイドがいないツアーでは、現地でガイドや通訳をこなす。レストランではウエートレス役も求められる。ツアーの中に「英会話レッスン」を組み込まれ、講師役をやらされたこともあった。

「契約時に集められなかったお金の徴収から経理から、何から何までやらされました」