韓国語が堪能でも「博士」には仕事なし
取材で出会った「ワーキングプア」と呼ばれる人たちは、一様に将来の不安を口にするが、具体的なビジョンを見出せないでいた。まるで、一度落ちたら這い上がれないアリ地獄に陥ったようだ。
「10年後、20年後を考えるとたまらなく心配になる。だけど、どうしていいかわからない」
スーツ姿で、身だしなみもおしゃれなケンジさん(29歳、仮名)は嘆息する。
筑波大学の博士課程にまで進み、昨年6月に 韓流のモバイルサイトを運営するIT系会社に就職。今は同社が発行する会員誌の編集をしている。
ケンジさんは、紛れもない高学歴だ。しかも語学が堪能で、特に韓国語はペラペラ。なのに、給料は手取りで月16万円程度。同年代で同レベルの学歴があれば、年収1000万円近い人も珍しくないことを考えれば、ケンジさんは“流行”の「高学歴ワーキングプア」といっていいかもしれない。
仕事はかなりハードだ。朝は10時に出社、忙しいときは深夜の2時、3時まで働き、疲れた体を引きずるようにして家路に着く。