3つのブラックスワンの可能性
ここからの論点は、通常、確率的には極めて低いものの、発生すると非常に巨大な損失をもたらすリスクのことを指す、「シナリオ分析」であることを留意しておく。都市封鎖や自粛が解除されても、コロナショックが終わったわけではない。最悪のシナリオを想定しておく必要があります。
1つ目、海外クレジット投資における懸念。リーマンショックの際には、金融危機の引き金となったのは、住宅ローン、住宅ローン担保証券(RMBS)といった家計債務でした。今回、金融市場が懸念しているのが、信用力の低い社債、信用力の低い企業向けの融資、いわゆるレバレッジドローン、それを証券化したCLO(ローン担保証券:Collateralized Loan Obligation)です。このCLOの格下げが3月に入り急速に行われています。
リーマンショック前の07年3月時点でのサブプライムローン残高は約1兆3000億ドルでした。直近のデータを見てみると、18年時点ではBBB格社債が約3兆2000億ドル、ハイイールド社債が約1兆2000億ドル、バンクローンが約1兆2000億ドル、レバレッジドローンが約1兆1000億ドルという規模感に膨れ上がっています。
日本の企業業績の赤字が100兆円になる最悪のシナリオ
FRBはこの問題が金融危機に拡大しないことを、積極的な対応で必死に止めている状態です。企業債務を原資とするCLOなどの証券化商品は、安定を取り戻したかにも見えなくはありません。しかしこれに対して、野村総合研究所の木内登英氏は「木内登英のGlobal Economy & Policy Insight」のコラム内で、「実際には安定回復にはなお遠い状態であり、今後時間が経過するに従い、企業の財務の悪化、信用力の低下、格下げの動きは進んでいき、それが金融市場の混乱、ファンドなどの経営不安問題、企業の資金ひっ迫などの多くの問題を生じさせていく可能性がある」と述べています。
2つ目は、日本の企業業績の赤字が100兆円になるという最悪のシナリオです。フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の試算によると、国内上場企業における利益額上位18社は、全上場企業の利益の半分程度を稼いでいます。新型コロナウイルスの影響が今期いっぱい残るとすれば、利益額上位18社の赤字は約12兆円。全上場企業では約25兆円程度の赤字が予想されています。