トヨタは強気。けれども弱い自動車業界

続いて、自動車業界を見てみましょう。

今月12日、保守的なことで知られるトヨタは、決算でV字回復のシナリオを打ち出しました。今期8割近い売上減少を見込むものの、世界の自動車市場が4月から6月を底に徐々に回復し、20年末から21年前半にかけて前年並みに戻る想定だといいます。

なぜここまでトヨタは楽観的なシナリオを描いているのでしょうか。

背景には、新型コロナウイルスの発生源である中国市場の回復が想定よりも早かったことが挙げられます。ただし、依然工場の稼働率は下がったまま。自動車業界は固定費が重くのしかかっており、たとえば日産自動車は1万2500人の人員削減策からさらにリストラを検討していると報道されています。

従業員を一時的に休ませ、解雇していない人員を抱えていることから、今後、リストラが断行されれば、解雇しなかった従業員に対しては減給の措置を取らざる負えないでしょう。自動車業界が低迷すれば、部品を供給している中小企業、鉄鋼、プラスチック、制御用コンピューターに至る広い業界にダメージが及びます。

自動車業界も、航空業界と並んで危うい業界の一つに挙げられます。

ECをうまく展開できない百貨店に倒産の足音…

先ほどの総務省のデータを見ると、卸売業・小売業の労働力人口は、昨年同月比17万人増となっています。しかし現在、ECを上手く展開できていない小売業やアパレルは打撃を受けており、この被害はさらに拡大するおそれがあります。

特に被害が大きいのが百貨店業界です。大手百貨店が5月1日発表した4月売上高速報によると、各社ともに70~80%の大幅減少となっています。高島屋が75%減、大丸と松坂屋のJ.フロントリテイリングは78%減、三越伊勢丹ホールディングスは81%減、そごう・西武は71%減となっています。倒産の足音すら聞こえてきます。

ここ数年、小売業はインバウンド需要に支えられていたため、インバウンド需要の回復まで長い期間が想定されるため、人員整理も検討されるでしょう。インバウンド市場の冷え込みという点では、宿泊・飲食・サービス業も同様です。

2008年のリーマンショックでは、製造業からあふれた雇用をサービス業が吸収しましたが、今は、その受け皿も被害を受けている状態。リストラされた人たちが行く場を失う未来も考えられます。